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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第24章 tempestoso…


俺はサーバーの前に立つと、冷やしてあったジョッキにオーダー分の生ビールを注ぎ、カウンターに並べた。

それをバイト君達が手分けして席に運んで行く。

その間に料理の準備をして…、またサーバーの前に立って生ビールを注いで…

厨房スタッフは俺以外にも三人いるものの、客は予約客だけじゃないから、次々入って来るオーダーを捌のに必死で…

でもそんな時に限ってトラブルは付き物なわけで…

「店長すいません…」

塚ちゃんが血相変えて厨房に飛び込んで来るもんだから、もう溜息しか出てこない。

「何、どうしたの?」

刺し盛りの準備をしながら俺が聞くと、塚ちゃんはまるでダンスでもしてるかのように、身振り手振りを交えながら説明してくれた…んだけど、全然伝わんねぇ(笑)

「いいからさ、落ち着いて説明してくれる?」

俺は手を止め、ついでに塚ちゃんの動きも止めた。

「えっとですね…」



「分かった、俺が行くから塚ちゃんはこっち頼むわ」

塚ちゃんの話によると、連れの客が来たにも関わらず、スタッフの誰も気付かず…

客に放置プレーを食らわした結果、あの竜也って奴が切れたらしい。

ついでに言えば、塚ちゃんは誠心誠意謝ったつもりらしいが、塚ちゃんの持ち味でもある人懐っこさと、明る過ぎる笑顔が竜也って奴の怒りに火をつけた…ようだった。

俺は小さく溜息を落とすと、足首まであるエプロンを外し、鉢巻状にしたタオルも外してから、二度目の溜息を落としながらホールへと出た。

手にはしっかりおしぼりと、口取りの小鉢を携えて…

一応“店長”を任されている以上、店の責任者は“俺”なわけで、当然クレームの対応だって俺がしなきゃいけないのは分かってるんだけど…

苦手なんだよな、俺…

しかも相手は、いかにもヤンチャそうな奴だし…

でもおっちゃんの甥っ子って知っちまった以上、適当なことは出来ねぇ…よな…

はあ…、面倒臭ぇ…

三度目の溜息を落とし、作り笑顔を浮かべた顔を上に向ける。

その時俺の視界に飛び込んで来たのは…
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