君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第24章 tempestoso…
「おっちゃんの知り合い?」
だとしたら、サービスしねぇと…
「知り合いも何も、俺の甥っ子だよ」
「え、マジで?」
「何でも、三年前に赴任して来た上司のために、親睦会を開くんだとさ」
三年前…か…
丁度翔さんが本社から異動になった頃か…
「ふーん…。つか、今頃親睦会なの?」
三年も経ってるのに?
「いやいや、親睦会ってぇのは表向きで、実際は快気祝いとか何とか言ってたっけな…」
「ああ、なるほど(笑)」
だったら納得かも。
「ま、どっちにしろ宜しく頼むわ」
おっちゃんが所々解れたキャップを外し、俺に向かって頭を下げるから、
「おう、任せといて」
俺はポンと胸を叩いた。
だっておっちゃんの甥っ子ってことはさ、手抜きなんて出来ないしね?
俺はおっちゃんから貰ったルアーをポケットに入れ、自転車に跨ると、店まで全速力でペダルを漕いだ。
「よし、準備完了! 俺、暖簾出して来るわ」
塚ちゃんを始め、バイト君達がそれぞれのポジションに立つ。
俺は暖簾を手に、入口ドアを開くと、店の外に並んでいた客を迎え入れた。
「予約しておいた上田っすけど…」
「お待ちしてました」
俺は苦手な営業用スマイルを浮かべると、上田と名乗った男と、その後に続く男女の団体を、予め準備しておいた席に案内した。
つか、おっちゃんの甥っ子だって言うからどんな奴かと思ったら…
頭はキラッキラの金髪だし、このくそ寒いのに革ジャンにタンクトップだし、首にも耳にも…ついでに指にも、やたらとデカイアクセサリー着けてるし…
超ヤンチャそうな奴じゃん…
おっちゃん、ごめん。
いくらおっちゃんの甥っ子でも、俺コイツとは絶対友達にはなれそうもないわ…
俺は心の中でおっちゃんに謝りながら、ドリンクオーダーを取った。
でも…、あれ…?
「えっと、ご予約の人数は20人て…」
何度数え直しても、一人分足りない。
「ああ、ちょっと野暮用が出来て、遅れて来るから…」
「ああ、なるほど…」
俺は19人分のドリンクオーダーを手に、厨房へと引っ込んだ。
後は塚ちゃんに任せておけば良い。
誰よりも愛想の良い塚ちゃんならきっと…