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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第22章 subito


もう後ろなんて見ないって…、前だけを見て歩いて行くんだって…、そう心に決めたばかりなのに、もう後悔ばかりが胸に募って、結局俺は自分の弱さを思い知らされる。

駄目だな…、俺は…

声に出せない思いを、溜息と一緒に吐き出した。

すると、そんな俺を見ていた雅紀さんが、

「智は…さ、まだ櫻井さんのことを…?」

言いづらそうに聞いてくるから、俺もつい戸惑ってしまう。

まだ櫻井さんのことを好きなのか…、と問われれば、答えは当然“Yes”なんだろうけど、好きだからってどうかなる問題でもないってことは、俺自身が一番良く分かってるから…

正直、何て答えたら良いのか、分からなくなる。

でも唯一分かってるのは、

「自分の気持ちが分かんないんだ…。分かんないんだけどさ、会いたくて堪んないんだ…」

例え言葉を交わせなくても…
例え以前のようにお互いの気持ちを通わすことが出来なくても…

それでも翔さんに会いたい。

翔さんの傍にいたい。

「そう思うことは許されないことなの…? だから潤さんは俺に、“翔さんと会うことは出来ない”って言ったの?」

「それは違うと思うよ?」

俺の問いかけに、静かに首を横に振った雅紀さんが、やっぱり静かに答える。

「じゃあどうして…?」

「潤が櫻井さんとどんな約束を交わしたのかはさ、俺も聞いてないし、聞こうとも思わない。でもさ、櫻井さん俺に言ったんだよね…」

「なん…て…?」

「智がいつか自分の足でちゃんと歩けるようになったら… 、その時まだ自分を愛してくれてるなら…、その時は会いに来て欲しい…、って…」

布団の端を握った俺の手に、雅紀さんの手がそっと重ねられる。

触れた指の先から、雅紀さんの少し高めの体温と、優しさが伝わって来るような気がして…

「翔さんがそんなことを…」

「だからさ、焦らなくて良いからさ、少しづつで良いんだからさ、歩いてみないか? 自分の足でさ…」

次に翔さんに会う時に、恥ずかしくない自分でいるために、自分の足で…
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