君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第22章 subito
目が覚めるとそこは俺の部屋で…
雅紀さんが心配そうに俺の顔を見下ろしていて…
「ごめん…、また心配かけちゃった…」
俺が言うと、雅紀さんは俺の髪をサラッと指で梳いてから、
「ホントだよ…、世話が焼けるんだから…」
優しく笑って、ペットボトルのキャップを開け、身体を起こした俺の口元に寄せた。
こんな時でも、雅紀さんは俺を子供扱いする。
いや…、こんな時だから、か…
「雅紀さんは知ってたの…? 翔さんが結婚してないこと…」
「まあね…。詳しい時事までは知らないけど、結婚の話が無くなったことは聞いてたよ」
「そっか…」
雅紀さんのことだから、当然潤さんから話は聞いてると思ってたけど…、やっぱりそうなんだ…
「でも驚きだったね…」
「…うん」
きっと誰も予想してなかった事だと思う。
まさか翔さんが結婚しようとしていた人が、実は松岡先生の彼女だったなんて、ドラマみたいな話。
それに子供のことだって…
翔さんは自分の子だって信じてたみたいだけど、実際には松岡先生との間に出来た子だった、ってこと…なんだよな?
何の目的があってそんな嘘をついたのか、俺には想像も出来ないけど、たった一度…あの花火大会で偶然会ったあの人が、翔さんを傷付け、苦しめたのは紛れもない時事で…
「許せないよな…」
俺の心を代弁するかのように、雅紀さんがポツリ呟く。
「どんな理由があるにせよ、人の心を散々弄んで、傷付けて…。許せるわけないよな…」
滅多なことでは人を悪く言わない雅紀さんが、静かな怒りに唇を噛む。
そして空になったペットボトルを、クシャりと握り潰した。
「ねぇ…、雅紀さんは翔さんが今どうしてるのか知ってるの?」
「さあ…、仕事で大きなミスをしたとかで異動になったとは、櫻井さん本人から直接聞いてるけど、今どうしてるのかは…俺も知らないんだ」
「そっか…、翔さん異動になったんだ…?」
あのいつでも完璧だった翔さんがミスなんて…
俺はそんなことも知らず、自分だけが辛い思いをしているとばかり…
翔さんだって、俺と同じ…いや、俺以上に苦しかった筈なのに…