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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第21章 loco


気持ち悪い…、その言葉に嘘は無かったんだと思う。

俺だってもしその立場なら…、恐らく同じように答えたとだろう。

でもその偽りのない本音が、幼い松本の心を傷つけた。

「その翌日だったかな…。学校行くとさ、噂になってるわけよ、ホモだの変態だのさ…、言いたい放題でさ…」

初めは一つだった筈のナイフが、無数のナイフの束となって、深く…

深く…

「それからかな…、俺は本来の自分自身を硬い殻に閉じ込めた結果、誰にも心を開くことなく、自分を偽って生きて来た。智也さんと出会うまでは、ね…」

「智也さんとはどこで?」

「そうだな…、丁度高校を卒業する頃だったかな…、友達と偶然入ったファストフード店で働いてたのが智也さんで…。あの人さ、今と全然変わんないの。無精髭は生えてるし、なのにおネェ言葉だし…(笑)」

「そうなんだ? でも、なんか想像出来るかも…」

でしょ?、と言って松本が思い出し笑いをする。

それくらい、智也さんとの出会いは印象的だったんだろうな…

「一緒にいた友達はさ、智也さんのこと“気持ち悪い”って言ったけど、俺は…俺だけは違っててさ…。なんつーの…、やっと俺のことを分かってくれる人に会えた、って言うかさ…、そんな感じだったかな…」

それまで自らの性癖を隠して生きて来た松本にとって、智也さんとの出会いは、それだけでその先の松本の人生にとって、とても大きな影響を及ぼしたってことは、今の松本を見ていれば容易に想像が出来る。

「それからは智也さんに会いたい一心で店に通ってさ…。漸く親しくなれた時には、智也さんのこと、好きになってたんだよね、俺…」

「へぇ…、って、えっ!?」

まさか…、とも思える告白に、俺の思考が止まり、同時に足も止まった。

にも関わらず、松本は歩を止めることもなければ、ポツンと取り残された俺を振り返ることもせず、話を続けた。

「俺の初めての相手…、智也さんなんだ…」

と…
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