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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第21章 loco


「えっと…、もう一回言ってくれるか…?」

聞き取れなかったわけじゃない…

寧ろ、松本の声しか聞こえないくらい、その言葉だけが頭の中で何度も木霊した。

「だから…っ!」

そう言ったきり、松本は俺から視線を逸らすと、気持ちを落ち着かせるためだろうか、何度か首を小さく振ってから、

「この間の会議だよ…。お前、プロジェクトの責任者なのに無断で欠席したろ…?」

「えっ…、ああ…、でも会議自体は何の問題もなく済んだって…」

「確かに上手く行ったさ…。新規プロジェクトに関わる下請けや、諸々の関連会社との契約だって、幾つかは取り付けることに成功だってしてる」

「だったら…」

言いかけた俺に、松本が男のわりには長い睫毛に縁取られた瞼を伏せた。

「だけどな、櫻井…。お前を信頼して…お前が責任者だからって、プロジェクトへの参加を決めた企業はそうは行かないんだよ…。分かるよな…?」

「ああ…」

身から出た錆…、そんな言葉が驚く程しっくりとくるような…、そんな気分だった。

俺は、俺を信じてプロジェクトの責任者という大役を任せてくれた人達の信頼を、社会人として一番最低な方法で裏切ってしまった。

異動の辞令が下ったのは、当然と言えば当然の報い…。

「そっか…。それで…、俺はどこに?」

本当は自分の目で確かめた上で受け入れたいところだが、今更あの人だかりの中に入って行く勇気は…、残念だが俺にはない。

だったら、俺が最も信頼を寄せられる松本から聞かされた方が、幾分かマシだと思った。

でも松本は、

「それが…、その…」

それまでの饒舌さが嘘のように口篭り、所在なさげに視線を右へ左へと落ち着きなく泳がせた。

「いいから言えって…」

今更遠慮なんてする必要はないし、驚きもしない…

そう思っていた。

松本から移動先を聞かされるまでは…
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