君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第19章 stringendo
余程疲れ切っていたのか…
けたたましく鳴り響くスマホの音に飛び起きた時には、すっかり日が昇りきっていて…
「嘘だろ…」
スマホに表示されている時刻を見て更に驚いた俺は、慌てて身支度を整えると、乱れたベッドもそのまに、階段を駆け下りた。
階下ではお袋が、俺に食わせるためなんだろう…飯の支度をしていたが、俺はその横をすり抜け、適当に洗顔を済ませ、慌ただしく玄関へと向かった。
「もう行くの? 日曜なんだし、もう少しゆっくりして行けば…」
そうしたいのは山々だが、そうも言ってられない。
「ごめん、今日大事な打ち合わせが入っててさ…。悪いけど、お袋から親父に宜しく言っといてよ…」
本当はもっとゆっくり話をしたかったけど…
「またゆっくり来るから…」
その時は智と一緒に…、なんて到底叶いそうもないけど…
俺は若干の申し訳なさと心苦しさを感じながら玄関を飛び出し、最寄りのバス停に向かって全力で走った。
…が、ついてない時ってのはとことんついてないもので…
バス停まで数メートルを残したところで、バスは俺の横を通り過ぎ…
「嘘…だろ…? マジか…」
肩で荒い息を整えつつも、落胆に肩を落とす俺を嘲笑うかのように、バスが一つクラクションを鳴らした。
「参ったな…」
次のバスが来るのは1時間後だし、こんな田舎町では通りがかりのタクシーを捕まえることは奇跡に近い。
かと言って他に移動手段なんて、歩く以外にはないし…
でもここから駅まで歩いていたら、確実に時間には間に合わないし…というか、既に間に合ってないんだけど…
俺はスマホを取り出すと、同行予定だった松本に電話をかけた。
松本には事前にある程度の資料は預けてあったが、一番重要な書類だけは、俺の手元に置いたままだったことを思い出した。
頼む…、出てくれ…
スマホを持つ手に自然と力が入り、喉は唾さえ飲み込むのが困難なくらいに、喉はからからに乾いていた。