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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第19章 stringendo


「男…って…?」

そう言ったきり言葉を失くしてしまったお袋は、今にも卒倒してしまうんじゃないか…ってくらいに青ざめた顔をしていて…

やっばり告げるべきじゃなかった、と一瞬は後悔したけど、一度口火を切ってしまった以上、もう引き返すことは出来ない。

俺はテーブルに額が擦れるくらいに深く、二人に向かって頭を下げた。

「ごめん…。二人の期待を裏切るようなことして…、ごめん…」

あんなに孫が出来たことを喜んでいたお袋を、二度も裏切るようなこをしてしまって、ごめん…

櫻井家の長男なのに、何よりも家名を大事にする親父の期待に添えなくて、ごめん…

俺はテーブルに額を擦り付けたまま、顔を上げることが出来なかった…というよりは、親父とお袋の落胆する顔を見たくなかっただけなのかもしれないけど…

だから、

「本気なのか?」

親父にそう問われても、やっぱり顔は上げられなくて…

でも、

「一時の感情に流されてるだけじゃないのか?」

次にそう問われた時には、俺は真っ直ぐ親父の目を見つめ、

「違う…、一時の感情なんかじゃない。俺は本気で智のことが好きで…、好きで…」

そこまで言って、堪えきれなかった涙がテーブルの上にポツリと落ちた。

そして一度堰を切ってしまったその涙は止まることはなく、気付けばテーブルの上にはいくつもの水滴が溜まりを作っていた。

「そんなに泣く程、その人のことが好きなの?」

「好きで好きで…、“好き”なんて言葉じゃ足りないくらい、俺は智のことを…」

頬を濡らす涙を拭うこともせず、これまで自分自身で抑制をかけ、胸の奥に仕舞い込んで感情を吐露する俺の前で、両親が互いの顔を見合わせ、溜息とも区別のつかない息を吐き出した。

呆れてるんだ、と…
同性相手に恋愛感情を持った息子を、軽蔑してるんだ、と…

そう思った俺は、ゆっくり席を立つと、再度両親に向かって深々と頭を下げた。

「俺…もう息子でいる資格ないよね…」

こんな息子で、ごめん…

俺は両親の顔を見ることなく、そのままリビングのドアノブに手をかけた。
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