君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第19章 stringendo
俺は淡々と…
自分でも驚く程淡々と、彼女の両親から聞かされた話を、親父とお袋に話して聞かせた。
俺と付き合っている時から、彼女には別の男性がいて、その人には妻と子供がいたこと…
そして彼女の腹の子は、彼女と、その男性との間に出来た子だということ…
それだけでも親父とお袋にとっては、十分衝撃的だったと思う。
俺がそうだったように…
「で、でも…、じゃあどうしてあんたの子だなんて嘘を…? それに本当にその人の子かどうかなんて…。あなたの子供である可能性だって…」
俺だってその可能性を信じていたさ…、彼女の両親に会うまではね…
でも彼女のご両親に会って、DNAの結果結果を見せられた瞬間、俺の淡い期待は脆くも崩れ去った。
「分かるんだよ、今は…。例え妊娠初期であっても、DNA検査が可能なんだよ」
彼女の腹の子が、俺との間に出来た子だという可能性は、素人の俺が見たって分かるくらいに、極めてゼロに近い数字だった。
「それに、最初は本当にどっちの子か分からなかったって…」
それだって今となっては都合の良い言い訳にしか聞こえないけど…
「要するに、利用されたってことだろう…」
それまでずっと沈黙を守っていた親父が、湯呑みのお茶を飲み干し、「おかわり」とばかりに湯呑みをお袋に差し出す。
「どうせその浮気相手の男に、そのDNA検査の結果を突きつけて、自分の子だって認めさせた上で、女房と別れるように仕向けたんじゃないのか? お前は、その男が認めなかった場合の“保険”にされたんだろ…」
流石、伊達に長生きはしてないよな…
親父の鋭い勘に、俺は思わず言葉を失った。
つか、利用したとかされないとか…、身も蓋もない言い方だな…
まあ…、当たらずとも遠からず…、だけどさ…
「何かさ、その浮気(少なくとも彼女にとっては“本気”なんだけど…)相手の男ってのが、医者の息子らしくてさ…」
しかも、奥さんとの離婚話も進んでるって言うんだから、もう呆れるしかない。