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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第18章 espresso


ニノは、俺からの電話を待ってたんじゃないか…ってくらい、直ぐに電話に出た。

いつもなら、俺からの電話なんて、面倒くさがって中々出てくれないのに…

俺は電話越しに、思いつく限りのケーキの種類を伝えた。

そしたらさ、ニノの奴…

「智はどれが良いの?」

なんて聞いてくるから、俺は数種類はある中で、一番最初に目を引いたケーキを思い浮かべた。

「俺は…チョコかな…。なんつーの、コーティング?とかしてあって、金箔までまぶしてあってさ、超キラキラしてんだ」

「ふーん、そっか…。じゃあ俺も同じので良いよ」

「え、でもお前チョコケーキなんか、あんま食わねえじゃん…」

「うん、そうなんだけどさ、せっかく智が買ってくれるんだもん、智と同じのが良いかなって…。それに、残ったら智が食べてくれるんでしょ?」

「まあな…」

ニノも俺と同じで、どちらかと言えば食が細い方だから、あまり量を食べたりはしないんだけど、甘い物は別だ。

俺はニノとの電話を繋げたまま店内に戻ると、ケースの中で一際キラキラと輝いているケーキを二つ、小さな箱に詰めて貰った。

俺はケーキの箱を、自転車のカゴに入れると、中で転げてしまわないように、背中のリュックを隙間に詰め込んだ。

「ケーキも買えたし、もうちよっとしたら帰るから…」

「うん、待ってる」

「おう、楽しみにしてろ」

じゃあな…、そう言って電話を切ろうとしたその時、電話の向こうで、小さな…耳を澄まさなければ聞こえないような、本当に小さな声が俺を呼んだ気して…

「ん、何…? 聞こえねぇよ…」

聞き返した俺の目の前を、大きなトラックが通り過ぎて行く。

うるせぇな…

心の中で毒づいて、電話の向こうの声に意識を集中させる。

そして聞こえて来たのは、

「智、ありがとね…。好きだよ」

長い付き合いの中で、ただの一度だってニノの口からは聞いたことのない言葉で…

俺はどうしてニノが突然そんなことを言ったのか…、不思議で仕方なかった。


まさか、それがニノの声を聞いた最後になるなんて、思いもせずに…
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