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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第17章 generalpause


俺は取り返したスマホをパンツのポケットに捩じ込むと、苛つく感情をひた隠しにキッチンに立った。

「コーヒーしかないけど…淹れるから…」

ポットには、丁度二人分のコーヒーが残っている。

俺は棚から俺用のマグと、もう一つ来客用のカップを取り出し、ポットのコーヒーを注いだ。

でも、

「貴方何も知らないのね? 妊婦にカフェインは良くないのよ? 他の物はないの?」

こんな時ばかり妊婦アピールか…

隠れて煙草を吸ってること、俺が気付いてないとでも思ってるんだろうか…

「済まない、酒とコーヒーくらいしか置いてないんだ…」

「あ、そ…。じゃあ要らない…」

赤い爪で長い髪を掻き上げ、ついさっきまで俺が寝ていた場所にドカリと腰を下ろして、随分と大きくなった腹を、さも邪魔そうに足を組む。

おれはその姿を横目で見ながら、小さく息を吐き出すと、マグを手にラグの上に腰を下ろし、コーヒーを一口啜る。

同じコーヒーなのに、さっき飲んだコーヒーとは違って、苦味しか感じないのは何故なんだろう…

俺はコーヒーを半分くらい飲んだところで、マグをテーブルの上に置いた。

そして胡座をかいた膝の上で両手を握ると、自分の部屋にいるにも関わらず感じる居心地の悪さと、息苦しさから逃れようと、天井を仰ぎ見てから大きく息を吐き出した。

まるで茨の檻にいるようだな…

常に彼女の機嫌を取り、スマホの中身まで監視され…、隠し事一つも持てず…

寝ている間ですら、智の名前を口走りやしないかと怯えて…

彼女と正式に結婚したら、こんな生活がずっと続くのかと思うと、正直気が滅入る。

本当なら結婚も何も全部投げ出し、逃げてしまいたいところではあるが、そうしないのはやっぱり、彼女の腹にいるのが自分の子だと思うと、こんな俺でも情ってもんが湧いてくる。

彼女のためじゃない、産まれてくる子供のために、俺はこの状況から逃げ出すことはしちゃいけないんだ、って…
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