君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第17章 generalpause
「そっか…」
小さく言って松本がポケットから取り出した缶コーヒーを俺に差し出す。
「サン…キュ…」
受け取った缶コーヒーを開け、冷え始めた身体に流し込む。
すっかり温くなってはいたが、缶コーヒー特有の甘ったるさと香りが、俺の硬くなな感情を和らげて行くような気がした。
それは多分松本も同じで…
「智ね、最近カウンセリング受け始めたんだ…」
「カウンセリング…って…?」
「ほら、智の声が出ないのって心因性のもんじゃん?」
「ああ…、うん…」
智本人から詳しく聞いたことはないが、確か相葉さんの義弟でもあるニノ君の死が深く関わっている、とは聞いたことがある。
「一応さ、カウセリングの内容とかってのは智本人にしか分かんないし、俺も詳しくは聞いてないんだけどさ、智の奴…ずっと和が死んだのは自分のせいだ、って思ってんじゃないかな、って…」
それは俺も薄々感じていた。
智は口にこそ出さなかったし、俺自身そう何度も目にしたわけでもないが、部屋の片隅に置いたニノ君の写真を見つめる智は、いつもとても悲しそうな顔をしていて…
男の割には綺麗な手をピタリと重ね合わせると、音もなく“ごめん…”とだけ呟いていた。
どうして“ごめん”なんて謝罪の言葉を口にするのか…、俺はその度に訊ねることこそしなかったが、付き合っている間も…、それから別れた今電車ずっと気にはなっている。
今にも泣き出しそうな顔で手を合わせる智のあの姿は、とても痛々しい物に俺の目には写ったから…
「勿論、俺の想像でしかないんだけどね?」
「…うん…」
「でもさ、アイツにしては凄い進歩だと思わない?」
「確かに…」
俺が何度病院に行こうと言っても、頑として重い腰を上げようとしなかった智が、自らカウンセリングを受けに行くなんて…ね?
本音を言えば、俺が智の声を取り戻しせてやれてたら…そう思わなくもないが、それでも智が少しずつ前に進もうとしているんだと思うと、何だか少し胸のつかえが少し軽くなったような気がした。