君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第17章 generalpause
好物のホタテフライを食い損ねたのは、正直残念ではあったが、そのことをきっかけに会話の糸口が見つかったのは事実で…
「こんなこと、お前に聞くのもどうかと思うんだけど…、智、どうしてる?」
ずっと聞きたくて、でも聞けなかったことを口にした。
「なんで? 気になる?」
松本が最後の一口を口に放り込み、空になった弁当のパックを丁寧に重ね合わせる。
相変わらず几帳面な男だ。
「いや…、そういうわけじゃなくて…、ただ元気にしてるかな…と思って…」
「ふーん、何だ…そういうこと?」
「べ、別に元気にしてるならそれで良いんだ…」
そうだ…、俺達は数ヶ月も前にとっくに終わってるんだ。
なのに別れた相手の近況を聞き出そうなんて、虫が良すぎるし、お門違いも良いとこだ。
「ごめん、変なこと聞いて…。俺、頼まれてる仕事があるから、先戻るわ…」
今の俺が仕事を頼まれることなんてあるわけないのに…、俺はその場を離れるための適当な嘘をついた。
同じ部署に勤務している松本には、当然通じないのに…
俺は胸ポケットから財布を取り出すと、弁当代だと言って千円札を一枚松本に差し出した。
でも松本はそれを受け取ろうとはせず…
代わりに、立ち上がろうとした俺の手首を掴んだ。
「ねぇ、別れたんだよね? 子供産まれたら結婚すんだよね?」
「そのつもり…だけど…?」
「なのにまだ智のこと気にしてんの?」
何が言いたい…
「俺はただ元気にしてるか気になっただけで、別に深い意味なんて…」
ない…
と言ったところで松本が納得しないことなんて分かってる。
俺は上げた腰を再びベンチに戻すと、松本の手をそっと払い除けた。
そして、人生一とも思えるような特大の溜息を落とした。
「本当に深い意味なんてないんだ。ただ、元気にしてくれててれば良いな…って…」
「本当にそれだけ?」
「ああ…本当だよ」
それ以外に理由なんてない。