• テキストサイズ

君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第17章 generalpause


そんな中、特に何をするわけでもなく、ぼんやりとPCの画面を見つめていた俺に、松本が一緒にランチでもどうかと声を掛けてきた。

松本とは、同じ部署に勤務しながらも、あの日以来どうにも気不味くて…

いつしか、営業先を一緒に回ることもなければ、僅かな休憩時間を共にすることすらなくなっていた。

俺はそれも当然の事だと思っていた。

松本は俺の友人の一人でもあるが、智を本当の弟のように可愛がる相葉さんの恋人でもあるのだから…

友人と恋人…、天秤にかけるような物でもないし、ましてや敵味方と区別をするような事でもないが、どちらに重きを置くかなんてことは、聞くまでもなく分かっている。

だから俺の方から、少しずつ距離を置くようにして来たのに、どうして…

突然のことに疑問を抱えながらも、俺は松本の誘いを受けることにした。

松本ならば、自分を飾ることも偽ることもせず、ありのままの俺でいられることが、松本の誘いを受けた理由でもあった。

ただ、久しぶりのランチが、まさか公園のベンチとは、微塵も思ってなかったけどな?(笑)



路上販売の弁当を買い、人気も疎らな公園のベンチで広げる。

炎天下の時期はとうに過ぎたから良いものの、木枯らし吹きすさぶ中…ってのも、身に堪える寒さは勿論のこと、侘しさすら感じてしまう。

そんな中で、俺達は特に会話をすることもなく、黙々と弁当を食べ続けた。

話しかけないと…

そう思えば思う程、考えれば考える程、会話のきっかけが、どうしても見つけられなくて…

俺は弁当を半分くらい食べた所で箸を置いた。

「どうしたの? 食べないの?」

「ああ…、食欲なくてさ…」

「ふーん、じゃあ俺貰っちゃって良い?」

俺の返事を待つこともなく、松本が俺の手から弁当のパックを奪って行く。

あ、ホタテフライ…
好物だからと最後に残しておいたのに…

そう思った時にはもうホタテフライは松本の口の中で…

俺は元々下がり気味の肩を更に落とした。
/ 364ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp