• テキストサイズ

君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第16章 divisi


数日後、俺は潤さんに連れられて、松岡さんが勤務する病院を訪れた。

松岡さんとは面識もあったし、一人でも大丈夫だって言ったけど、心配症の雅紀さんが不安がるから、仕方なく…なんだけど、まさか潤さんと二人きりなんて…

気不味さしか感じないんだけど…

とは言え、松岡さんは潤さんの先輩でもあるし、潤さんがいなかったら、そう簡単に松岡さんの診察は受けられないし…

病院って場所に行くってことだけでも十分気は重いのに、更に重さを増した気分に、俺は潤さんから見えないようこっそり溜息を落とした。

「あ、そう言えば雅紀から聞いたけど、雅紀のマンションに居候することにしたんだって?」

『まあ…』

そうだった…

一方的にバイトをクビにされた結果、毎月の家賃も滞るようになった俺は、今までアパートを引き払って、雅紀さんの部屋に居候することにした…というか、“なった”と言うか…

本当はもう少し頑張りたかったけど、雅紀さんの店で貰うバイト代だけではやっぱり無理で…

仕方なく…本当に仕方なく、居候させて貰うことに決めたんだけど…

雅紀さんの部屋には、当然潤さんもいるわけで…

見通しが立つまでの間とは言え、潤さんと上手くやって行ける自信がない。

でもそう思っているのは何も俺だけじゃなくて…

「雅紀が決めたことだから、俺に口を出す権利はないけど、邪魔だけはするなよ?」

潤さんからはしっかり釘を刺された。

つか、邪魔なんかするつもりないし…

『めんどくせぇ…』

潤さんに見えないよう、一人ごちった時、

「大野さん、大野智さん…」

俺を呼ぶ声がして、俯いていた顔を上げた俺は、

「行くぞ?」

『…はい…』

先に席を立った潤さんの後に着いて、気持ちと同じくらい重い足を引きずるようにして、松岡さんの待つ診察室へと入った。
/ 364ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp