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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第16章 divisi


特殊…

その一言で、俺は全てを悟った。

何だ、そういうことか…

俺がゲイだから…、だからクビってことなんだよな?

多分、あの女子高生が上島さんにチクったんだろうな…

じゃなきゃ、あの会社に俺がゲイだってことを知ってる奴はいないから…

そして上島さんが、何故メッセージでクビを伝えて来なかったのか…

それは、電話なら俺が反論も反発も出来ないと思ってのことだろうな…

電話では筆談すら出来ないから…

「だからさ、申し訳ないんだけどさ…」

上島さんが何かを言いかけたけど、俺の耳にはもう何も入ってはこなくて…

俺は話しの途中で通話を遮断した。

これ以上上島さんの話を聞いていたって無駄なだけだ。

俺達みたいな種類の人間への偏見持つ奴の言うことは、皆同じ…

「ゲイだから…、変態だから…、普通の人間に悪影響を及ぼすから…」

それ以上でも以下でもない。

俺はスマホの電源を落とすと、リュックに放り込み、ロッカーに鍵をかけた。

そうすることで、ずっしりと重くなった気持ちが切り替わると思ってた。

でも現実にはそう簡単じゃなくて…

常に俺のことを気にかけてくれてる雅紀さんは、ちょっとした異変すらも見逃さない。

大量の野菜を前に、手を動かすどころか、溜息ばかり落とす俺に向かって、

「何かあった?」

いつもと変わらない…いや、あえてそうしていたんだろうな…、笑顔を浮かべた。

俺は手に持っていた包丁をまな板の上に置くと、代わりにポケットの中のペンを手にした。

そしてメモ帳の白いページを開くと、

『バイト、クビだって…』

溜息の理由を、短くて簡単な言葉で書いた。

瞬間、雅紀さんから笑顔が消え、乱暴に前掛けを外すと、叩き付けるように調理台の上に置いた。

そして、

「俺、ちょっと出かけて来る」

そう言って調理場を離れて行こうとするから、俺は腕を掴んで引き止めた。

普段穏やかなくせに、けっこう導火線短いんだよな、雅紀さんて…
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