君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第16章 divisi
思い切り泣いて、シャワーで身体がさっぱりすると、今度は空腹が襲って来る。
それもその筈、俺が翔さんの部屋を出てから口にした物と言ったら、記憶にあるだけなら水分だけ。
これでは、いくら食に興味も関心もなくて、おまけに食の細い俺だって、腹が減るのは当然だ。
俺は何も入ってないと思いつつも、とりあえず冷蔵庫を開けてみた。
すると、
『あれ…?』
出かける前にはしっかり空っぽにした筈の冷蔵庫に、直ぐに食べれるようなサラダや麺の類がいくつか入っていて…
しかもレンジの前には、温めるだけのご飯のパックやカップ麺まで…
もしかして雅紀さんが…?
そっか…、俺がいつ目を覚ましても大丈夫なように、用意しておいてくれたんだ…
俺は早速パックのご飯をレンジに突っ込むと、冷蔵庫から素麺のパックを取り出し蓋を開けた。
喉はまだヒリヒリと痛いから、本音を言えば固形物はあまり…なんだけど、これならなんとか食えそうだ。
温め終えたバックのご飯を、ニノが使っていた茶碗に少し盛り、仏壇代わりの棚に置いて手を合わせる。
『ごめんな…、ニノのこと忘れてたわけじゃないけど、俺も色々あってさ…』
…って、ニノのことだから、きっとあの世で「だから言ったでしょ?」なんて言いながら、嫌味ったらしく笑ってんだろうな…
でもさ、ニノ…?
確かにお前が言ってた通りの結果になったけど、俺…ほんの一瞬でも幸せだったんだぜ?
誰かを好きになることが…
誰かに愛されることが…
こんなにも胸が暖かくなることなんだって…、翔さんと付き合ったおかげで知れたからさ…。
それに、お前良く言ってたろ?
あの時…とかさ、すげぇ痛てぇけど、その痛みも幸せなんだ、って…
俺もさ、翔さんに初めて抱かれて、その意味が分かった…っつーかさ…嬉しかったな…
それだけでも俺にとったら、すげぇ価値のあることなんだぜ?
まあ…、結果は…残念なことになっちまったけどさ…