君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第16章 divisi
身体を拭く手を止め、俯いてしまった俺の頭に、雅紀さんの大きな手がポンと乗せられる。
雅紀さんの手は、翔さん…程じゃないけど、優しくて暖かだ。
雅紀さんだけじゃない、潤さんだって…
ニノの事があってから、何となくお互い気不味くなっちゃったけど、それでも潤さんが俺の事を気にかけてくれてるのは、俺だってちゃんと知ってる。
それに、翔さんと付き合うかどうか俺が迷ってる時、俺の背中を押してくれたのは、他でもない潤さんだった。
「櫻井なら絶対智のこと大事にしてくれるから」って…
直接口にしたりはしないけど、潤さんには感謝してる。
二人共俺にとっては大切な人…
だからこそ悲しませたくはなかったんだけど…、こうなってしまった以上仕方ないよね…
俺はフッと息を吐き出すと、雅紀さんに向かって頭を下げた。
『ごめん…』って…
何で謝ったのか、理由は分からない。
ただ申し訳けなくて、そう言うしかなかった。
そしたら雅紀さん…
俺の言葉が通じたのかどうかは…分かんないけど、手に持っていたシャツを俺に被せ、いつもと変わらない笑顔を浮かべた。
そして着替えを済ませた俺の額にそっと手を当てると、自分の額にも同じように手を当てた。
「うーん…、本当は病院行った方が良いんだけど…、行きたくないんだよね?」
『うん…』
「分かった。俺、ちょっと薬局行ってくるよ。薬とか、何もないでしょ?」
そうだけど…、仕事は…?
週末だから、絶対忙しいの分かってんのに、なんで俺のためなんかに…?
きっと泣きそうな顔をしていたんだろうな…
「ほら。そんな顔しないで…。ちゃんと寝てろよ?」
俺の頭を一撫でしてからをベッドに寝かせ、一瞬時計を気にした雅紀さん。
やっぱり仕事の事が気になってるんだよね?
ごめん、
なんか俺…、迷惑かけてばっかりだ…
熱のせいでぼやける視界の中で雅紀さんの背中を見送り、俺は静かに瞼を閉じた。