• テキストサイズ

君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第16章 divisi


「これでいっか…」

新しいシャツを手に、雅紀さんが戻って来る。

つか、それニノのじゃん…

ニノとは服とかも殆どシェアしてたくらいだから、別にいいけど、兄貴なのにそんなことも知らねぇのかよ…

「はい、シャツ脱いで?」

『…いやだ…』

俺は頭が痛むのも構わず首を横に振り、タオルケットを引き寄せた…けど、今の俺が雅紀さんに適う筈もなく…

タオルケットの端を握った手を、加減てことを知らない馬鹿力で掴まれたかと思うと、抵抗する間もなくシャツが捲り上げられ、勢いのまま身ぐるみ剥がされる俺…

俺…、これでも一応病人なのに、扱い雑過ぎじゃねぇか?

なんて考える間もなく、

『アチっ…』

俺の背中に、ホッカホカの蒸しタオルが当てられた。

レンジの音がしてたと思ったけど…、この為か…

それにしても雅紀さん…、俺のこの身体見ても何とも思わないのかな…

胸や腹は勿論のこと、背中にだって無数の痕が残されているのに…

「ほら、前は自分でやりな?」

されるがまむ身を任せていた俺の手に、同じようにホッカホカのタオルが渡された。

俺はタオルを広げ、軽く熱を冷ますと、言われた通りに身体を拭き始めた。

自分ではそう気にならなかったけど、けっこう汗かいてたんだろうな…、スっとして気持ちいい。

「なあ、智? 櫻井さんと何があった?」

『えっ…?』

「旅行…行くって言ってたでしょ?」

『う…ん…』

「行ったの?」

一番聞かれたくなかったこと…

雅紀さんに旅行のことを聞かれたら、何て答えようか…って、アパートに帰って来てからずっと考えていた。

だって雅紀さんてば、俺が櫻井さんに旅行に誘われたって言ったら、まるで自分のことみたいに喜んでくれてたのに…

旅行にも行かなかった上に、櫻井さんとも終わった…なんて言ったら、雅紀さんのことだから、怒りはしないけど、絶対悲しがるだろうな、って…

だから暫くは黙っていようと思ったのに…

まさかこのタイミングで聞かれるなんて…、俺は何て答えたら良いんだろう…
/ 364ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp