第15章 diminish

程なくして聞こえて来た地鳴りにも似た爆音に、カラオケに興じる常連達の視線が一気に店舗入り口に集中する。

勿論俺も…

そして間を置くことなく震えた俺のスマホ。

液晶に触れることなく表示されたのは、

『着いた』

の一言だけで…

メッセージの送り主など確認しなくても分かる。

俺は手早く会計を済ませると、足早に店の外へと飛び出した。

暖簾を潜り、赤提灯の眩しさを視界の端に捉えながら、歩道の向こう側に視線を向けた俺は、目玉が飛び出る勢いで驚いた。

何せそこに停まっていたのは、夜目にも鮮やかなメタリックパープルで、しかも極めて車高の低いスポーツカータイプの車で…

外車ならではの左側の運転席には、これまた煌めくような金髪が、開け放った窓から吹き込む風に靡いている。

まさか…、とは思うけど…

俺は恐る恐る車に歩み寄ると、やはり恐る恐る運転席を覗き込んだ。

｢あの…、もしかして、なんだけど…松本…か？｣

出来ることなら違うと言って欲しかった。

でも実際返って来た答えは、

｢そうだけど？ つか、早く乗って？｣で…

一瞬で顔を引き攣らせた俺は、言われるがまま助手席に乗り込んだ、が…

｢うおっ…｣

スポーツカーならではのシートの低さに、座った瞬間思わず変な声が漏れる。

｢シートベルト、ちゃんとしてね？｣

｢あ、ああ…、はい…｣

返事はしたものの、なんたってこのタイプの車に乗るのは初めてのことだから、何がどうなってるのか…

それでも何とか松本の手を借りることなくシートベルトを締め、フッと息を吐き出した。

｢いい？｣

｢あ、ああ…、うん…｣

何だろう…、松本とはそんなに短い付き合いでもないし、なんなら恋愛相談だってする間柄で…

親友…と言うわけではないが、極めて親しい関係の筈。

なのに今は全く別人のように感じるのは、やっぱりこのド派手な出で立ちのせいだろうか…