君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第15章 diminish
轟音と爆音を響かせながら走る、メタリックパープルの車の中、俺はきっと物珍しげな顔をしていたんだろう…
夜にも関わらずサングラスをかけた顔が、信号待ちのタイミングで俺を振り返った。
「何よ…、そんなに見つめられたら穴が空くでしょ?」
「あ、ああ…、す、済まん…、つい…」
「見蕩れちゃった、ってこと?」
「い、いや…、それはないんだけど…さ…、ちょっとビックリした…っつーか…」
松本がドラッグクイーンをしてるのは話には聞いてたし、ドラッグクイーンがどう言った物なのかは、勿論認知はしていた。
けど、実際目にするのは初めてのことで…
しかもそれが同僚という名の友人ともなれば、戸惑いを感じてしまうのは当然なわけで…
正直どこを見て良いのかすら分からなくて、俺は視線を車窓へと向けた。
「あ、ちょっと寄りたいトコあるんだけど、寄ってもいい?」
「ああ。うん…、別に構わないけど…」
特に用事があるわけでもないし、明日は仕事も休みだし…、時間はふんだんにある。
「でもどこへ?」
何しろ松本の格好ときたら、金髪のロングヘアに、スパンコールが散りばめられた紫色のタイトなミニドレスを身に纏い、目の粗い網タイツで覆った足には、膝上まではあるだろうか、エナメルのブーツを履いている。
正直、この状態の松本と並んで歩く勇気は…俺にはない。
「この服…って言うか、ウィッグとか全部なんだけど、レンタルなのね? だから返しに行かないといけなくてさ…」
「へ、へぇ…、そう…なんだ?」
「あ、今、ちょっとホッとしたでしょ?」
「え、いや…、そんなことは…」
と、口では言いながらも、内心ホッとしたのは事実で…
俺は松本に見えないように、車窓に視線を向けるフリをしてそっと胸を撫で下ろした。