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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第15章 diminish


随分と遠回りをして、漸く帰路についた俺は、ついでに晩飯も済ませて帰ろうと、行きつけの居酒屋に立ち寄った。

そう、あのお節介が過ぎる大将の店だ。他にも“行きつけ”が無いわけじゃないが、飯も…となると、やっぱり大将の店しか思いつかない。

俺はいつもと同じ席に座り、焼酎と一緒に出された突き出しの肉じゃがを頬張る。

やっぱり美味い。

今度智にも食べさせてやろう、きっと気に入る筈…

…って、智とはもう終わったのに…

「何を考えてんだか…」

自嘲気味に呟いて、グラスの焼酎を一気に飲み干す。

一瞬喉が焼けるような感覚を覚えて眉を顰める。

おかしいな…、いつもはこんなことないのに…

グラスの中の氷をコロンと鳴らし、首を傾げた丁度その時、ポケットの中でスマホが震えた。

誰だろう、こんな時間に…

内心訝しみながらスマホを取り出し、液晶に表示された文字を読む。

「え…、何で…?」

思いがけず出た大きな声に、店内にいた大将を含む全員が一斉に俺の方を見る。

「あ…すいません…」

一気に居心地の悪くなった俺は、スマホを手に店の外へと出た。

その間もずっとスマホは俺の手の中で震え続けている。

松本がわざわざ電話をかけて来た理由は一つ。

それが分かってるから、本当は出たくないんだが…

「仕方ないか…」

俺は溜息を一つ落とすと、液晶画面に指を滑らせた。

「もしもし?」

「あ〜、やっと出たぁ! もぉ、遅い〜」

「あ、ああ…、済まない…」

つかお前…相当飲んでるだろ?

「で…何の用だ?」

この場合、要件だけ聞いてさっさと電話を切るに限るんだが…、そうもいかないのがこの松本って奴で…

「何の用って…決まってるでしょ? 智との旅行がどうだったのかなぁ〜って、ちょっと気になっちゃってぇ〜」

やっぱりその件か…

居酒屋の軒下…、赤提灯の灯りに照らされ、俺はガックリと肩を落とした。
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