君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第14章 dolore
翔さんの指が俺の指に絡む。
一瞬…
この手をずっと握っていたい…って、絶対叶いそうもないことを望んでしまう。
幸せに満ちたこの時間が過ぎたら、この手は俺の物じゃなくなるって、ちゃんと分かってるのに…
だから、
“愛してる…”
なんて言えない…、言っちゃいけないんだ…
俺は喉まで出かかった言葉を飲み込むと、
「智…、さと…っ…」
涙に震える声を聞きながら、静かに降りて来る翔さんの唇と、急激に加速度を増した翔さんの腰を、折れる程背中をしならせ、全身で受け止めた。
そして感じた熱…
ドクドクと脈打ちながら、俺の中に注ぎ込まれる翔さんからの愛を、身体の一番奥…深い場所で感じた。
なのに俺は…
『ごめ…、俺っ…』
結局イク…までは至らなくて…
その事が悔しくて、申し訳なくて…、涙が止まらなかった。
泣いちゃいけない、って…
俺が泣いたら翔さんが苦しむって分かってるのに…
笑っていようって言ったのは自分なのに…
これで終わりなのに、って思ったら、涙が抑えきれなくて…
「気にしないで?」
『でも…』
「こうして智が俺を受け入れてくれただけで…、それだけで充分幸せだから。だからもう泣かないで?」
しゃくり上げる俺の頬を、翔さんの手がそっと撫でる。
嫌だ…、別れたくない…
例え翔さんに家庭が出来たとしても、ずっとこうしていたい…
そう言ってしまえたら、どんなにか楽なんだろう…
でもそれは同時に、翔さんの幸せも、そして未来をも奪うことになる。
それが分かってるから、最後に一度だけ…と強請った筈なのに…
どうしたって折り合いの付けられそうもない感情は、涙となって俺の頬を濡らし続けた。
そうして一頻り泣いた後、
「風呂…行こうか? 身体、綺麗にしないとね?」
そう言って俺の中から中心を引き抜いた。
瞬間、俺と翔さんとを繋ぐ細い糸が、プチンと音を立てて切れたような気がした。