君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第14章 dolore
石のように固まったまま動けずにいる俺をソファに座らせ、翔さんがフッと息を吐き出す。
翔さんが何を言うのか…そんなの聞かなくたって大体想像がつく。
嫌だ、聞きたくない!
出来れば耳を塞いでしまいたい…、けど翔さんに両手を握られてしまったらそれも出来なくて…
俺は翔さんの口から吐き出される言葉に、泣き叫びそうな感情を抑えて耳を傾けた。
「付き合ってた人がいる、って話したろ? その人との間に子供が出来たんだ…。さっきのは、赤ん坊の写真で…」
そこまで言って翔さんが言葉に詰まる。
俺の手を握る手も微かに震えてるから、翔さんも俺以上に辛いんだと思う。
翔さん自身予想もしていなかったことが起きてるんだ、ってことは分かる。
でも…、俺達みたいな同棲のカップルならともかく、男女のカップルであれば、セックスをした時点でその可能性は少なからずあることを、頭の良い翔さんなら当然分かっていた筈。
なのにどうして…
俺は自分が“男”であることが悔しくて堪らなかった。
もし翔さんとは別の性を受けていたら、ひょっとしたらその“彼女”って人とも対等の立場になれたかもしれないのに…
もしかしたら俺だって、その人のように翔さんの…
そんな夢とも幻とも思えるような想いに思考を巡らせていたから…なのかな、きっと泣きそうな顔をしていたんだろうね…
翔さんが俺を抱きしめた。
強く強く…、そんなに強くされたら骨が折れちゃう、ってくらいに強く…
そして俺の肩に顔を埋め、何度も何度も深い呼吸を繰り返す翔さん…
その吐き出される吐息一つ一つが、俺に向かって「ごめん」って言ってるようで…
俺は翔さんの背中に回した手を解き、大きく上下する胸を叩いた。
「な…に…?」
翔さんが凄く不安そうに俺を覗き込むから、俺は翔さんにも伝わるように、ゆっくりと口を動かした。
『別れよ…』って…
声なんて出てないのに、震える声で…