君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第14章 dolore
「ちょっと待ってて、今コーヒー用意するから」
言われて頷くけど、風呂に入ったから…かな、眠いよ…
そっか…、そう言えば俺、夜中までバイトして、急いでアパート帰って、それから大急ぎで仕度して…
気付いた時には、一睡も出来ないまま朝が来てたんだ。
少しでも寝ようと思ったけど、翔さんとの旅行が楽しみで…、結局ベッドに横になっただけで眠れなかったんだけっけ…
いっぱい話したいことあんのに…
どうして待ち合わせ場所に来なかったのか、とか…
他にも、翔さんに会ったら話そうと思ってたこと、沢山あんのに…
俺は少しでも眠気を紛らわしたくて、ダイニングからリビングへと場所を移動した。
そこで俺が目にした物…
いくら根っからのゲイの俺でもそれが何を意味する物かは分かる。
瞬間、眠気なんてモンは一気に吹き飛んだ。
目の前が真っ暗になって、その小さな写真を持つ手がありえないくらいに震えた。
だから、
「智…?」
翔さんがかけた声も耳には入らなくて…
「智、コーヒー飲んだら送って行くから…」
カップが二つ…コトリと音を立ててテーブルに置かれた時、漸く翔さんがそこにいることに気付いた。
青ざめて凍り付く翔さんの顔…
「どう…して、それを…」
声だって震えちゃってさ…
俺はその瞬間思ったんだ…、“終わった”って…
“終わりにしなきゃいけない”って…
なのに翔さんたら、
「これは…なんて言うか、その…」
俺の手から写真を取り上げ、一生懸命言い訳しようとするから、現実だと思いたくないのに、これが現実なんだ…って言われてるような気がして…
『なん…だ…、そうだったんだね…』
自分に言い聞かせるように呟いた諦めの言葉は、やっぱり声になることはなくて…
だから当然、
「えっ…? 何…て…?」
翔さんの耳に届くことはなかった。