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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第12章 sostenuto


…って思ってたんだけど、結局睡魔には勝てず…

「…とし? そろそろ時間だから起きて?」

ほっぺたを突っつかれ、ゆっくり瞼を持ち上げた視界に、優しく微笑む翔さんが映る。

いつから見られてたんだろう…

寝顔を見られるのは初めてじゃないけど、やっぱりちょっと照れ臭い。

「良く眠れた?」

『うん…』

頷いた俺の前髪をサラリと掻き揚げ、そこに翔さんの唇が軽く触れる。

ちょっとだけ擽ったい…

「なら良かった。あ、バイト…七時からだったよね? 途中まで送って行くから、早めに出て何か食べて行こうか?」

言われて思い出した…

そう言えば俺、バイト終わりに賄い食っただけで、管理人のおじさんに貰ったアイス以外、何も食ってないや…

俺は一つ大きな伸びをすると、翔さんが差し出してくれる手を借りながら、ベッドの上に身体を起こした。

「何が食べたい?」

『何でも良いよ』

「じゃあ…牛丼でも良い?」

『いいよ』

「よし、決まり!」

まるで子供みたいに顔を綻ばせ、ベッドから飛び降りる翔さん。

ただ一緒に飯を食うってだけなのに、凄くはしゃいでいるように見える。

でも俺もそう…かな…

勿論、ニノのことを考えれば、自分だけがこんなに幸せで良いんだろうか、って気持ちにもなるけど、それすら考える余地もないくらいに、俺の気持ちもはしゃいでいる。

俺は翔さんの後を追うようにベッドから飛び出ると、着替えのためにTシャツを脱いだ翔さんの背中に抱き着いた。

「あ、こら…、そんなにくっついたら着替え出来ないでしょ?」

苦情を言うけど、その口調は全然怒ってなくて…

布越しでは分からなかった、思いの外筋肉に覆われた背中に指を這わせた。

『スキ…』

恋する乙女じゃあるまいし、なに恥ずかしいことしてんだろって思う。

でも、言葉で伝える術を持たない俺には、そうする以外に方法が見つからなくて…

だから、俺の気持ちが少しでも翔さんに伝わるように、何度も何度も背中に指を走らせた。

『スキ』って…

そんなことを繰り返しているうち、翔さんがクルリと身体を反転させて、少し高い位置から俺を見下ろすように見つめた。

でもどうして…?
どうしてそんな泣きそうな顔してんの?
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