君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第12章 sostenuto
ギュッと翔さんに抱き着くと、翔さんは少しだけ困ったよう顔をして、それから俺にソファに座るように促した。
翔さんに肩を抱かれたまま、二人で並んでソファに腰を下ろすけと…
そう言えば俺、ここで翔さんを…
つい先日のことが脳裏を過ぎって、自然と顔が熱くなる。
「あ、何か飲む?」
そう言って俺から離れて行こうとするから、思わずシャツの裾を掴んで引き止めた。
『何もいらない…』
その代わり、もう少しこのままでいたい。
つか…、安心したせいか、眠い…
沢山話したいことあるのに…、瞼が重くて…
「眠いの?」
コツンと肩に預けた俺の頭を、翔さんの指が優しく撫でる。
そんなことされたら、睡魔に拍車をかけるのに…
「今日バイトは? あ、そっか…、週末は休めないよね…?」
『うん…』
だから一緒にいられる時間は限られてるのに、こんな時に限って…
こんなことなら、無理矢理にでも寝ておけば良かった。
「起こして上げるから、時間まで少し寝ると良いよ」
『…うん』
瞼を擦って頷いた俺の頭を、翔さんがそっと膝の上に乗せてくれる。
別に膝枕とかして貰うのが初めてってわけでもないけど、凄く気持ち良いし…、それに凄く安心する。
こんな感覚は、もしかしたら初めてかもしれない。
「あ、ベッドの方が良く眠れるか…」
いいよ、このままで…
「よし…、ちゃんと捕まっててね?」
えっ…?
ええっ…!?
翔さんが立ち上がったと思ったら、突然自分の身体が浮き上がったことに驚いて、俺は眠気もどこへやら…、両手で翔さんの胸にしがみついた。
つか、これって…お姫様抱っこってやつ…なのか?
いや…、したことは何度かあるよ?
でも、されたことは…なかったかも…
だからかな…、嬉しい反面、照れ臭くて…
そっとベッドに下ろされてからも、両腕で顔を隠し続けていた。
「おやすみ」
腕の隙間を縫って、翔さんの唇が俺の唇に触れる。
ああ…、もお…、こんなことされたら眠れなくなっちゃうじゃんか…