君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第11章 pesante
二日酔いと戦いながら、ボーッとして時間を過ごしていたら、あっという間に時刻は正午を回っていて…
昨日の晩からろくなモン食ってないし、当然と言えば当然だが、腹が減った。
…が、普段自炊を全くしない我が家の冷蔵庫には、ビールを始めとする液体の類しか入っていない。
仕方ない、買いに行くか…
本当は着替えをするのも億劫だし、外に出たくないところだけど、そうも言ってられない。
俺は適当に着替えを済ませ、財布をハーフパンツのポケットに捩じ込んだ。
そしてスマホを手にした時、ふと松本のことを思い出した。
そう言えば…、せっかく誘ってくれたのに、松本の奴、怒ってるだろうな…
あの状況では仕方のなかったこととはいえ、黙って帰って来るなんて…、いくら親しい仲であってもして良いことではない。
先に謝りの電話をしておくか…
俺は買い物に出るのを後回しにして、再びソファに腰を下ろすと、スマホから松本に電話をかけた。
…が、どれだけコールしても、松本は電話には出ない。
たまの休みだ、まだ寝てるのかもしれない。
もしくは、相葉さんと一緒にいる…とか…
後でかけ直すか…
諦めて電話を切ろうと、スマホを耳から離した丁度その時、
「もしもし、櫻井?」
微かに…ではあるが、松本の声が聞こえて…
「あ、松本か?」
俺は慌ててスマホを耳に当てた。
「昨日は済まなかった」
俺は松本の返事を待つことなく、昨夜のことを詫びた。
「急な用事が出来てしまって…」
「ふーん…、急な用って…、女?」
「えっ…?」
まさか…、見られて…た…?
「店員がさ、櫻井と髪の長い女が、一緒に店を出て行ったって言っててさ…」
良かった…、見られていたわけじゃなかった…
俺は内心、ホッと胸を撫で下ろした。