自殺したら龍王の巫女(女)に転生しちゃったんだけど・・・
第4章 ドラグノスの1日(悪報編)
狼王国の使者へ返書を渡し、使者の退室を見送る。
誰もいなくなった部屋に深いため息が木霊する。
「どれだけ力を尽くそうと、思いを強く持とうとこの世から争いが消えることは無いのだろうか…」
小さな争いがいつの間にか国を巻き込む戦へと広がり、自分の育った国が炎にのまれ何も残らぬ荒野と化す。
父が、祖父が、先代の王達が護り、築いて来た国が滅ぶ。
否、そんなことは何があっても阻止せねばならぬ。
我が愛する娘、フィラルシェーラのためにも!
そのために出来ることをせねば。
まずは…奴に、鳥王にも狼王からの報せを伝えねばな…
「しかし…あまり事を荒立てるのは良くないか。」
ウンウンと考えを巡らせていると…
「龍王陛下、失礼いたします。黒龍騎士団長のグライザー様がお戻りになられたとのこと。」
「グライザーが?まさかもう戻ったのか。」
グライザー、龍王国を護る4人の騎士団の1人。
政には一切関与せず、戦の最前線に立つまさに騎士と呼べる男だ。
しかし、グライザーは私の命で5日程前に西の遠征に出たはずだ。
いくらグライザーと言えど戻るまで10日はかかると思っていた。
「まぁ、早く戻ってくれたのは都合がいい。報告も兼ねて私の部屋へ通してくれ。」
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「陛下、黒龍騎士団グライザー。西の遠征より戻りました。」
「うん、ご苦労だった。お前を行かせた後、戦況が安定したと報告を受けている。さすがの働きだ。」
「勿体なきお言葉痛み入ります。」
「グライザーよ。戻って早々だが、この書状を鳥王国のフェニーク女王へ渡してほしい。急を要するがあまり事を荒立てたくはない。」
グライザーは書状を受け取ると「戦争…でございますか。」と何かを悟ったように告げた。
何も言えぬ私を見て、グライザーはそれ以上は聞かず…
「承知いたしました。ただ、ひとつお願いがございます。」
「ん?何だ?申してみろ。」
あの戦いに明け暮れているグライザーのことだ、新しい武器や甲冑を所望したいのだろう。
そのくらいどうという願いではない。
「さぁ、どうした?遠慮せずに申してみろ。」
すると、グライザーは珍しく顔を赤くとしながら…
「戻りましたら、ぜひ姫君様にお目通りを…願いたく存じます///」
