自殺したら龍王の巫女(女)に転生しちゃったんだけど・・・
第4章 ドラグノスの1日(悪報編)
…ん?
「フィラルシェーラに?」
グライザーは俯いたまま小さく頷いた。
「それだけでよいのか?本当に?もっとないのか?というよりなぜその願いなのだ?」
いや、父親としての嫉妬などをしているわけではなく、あの戦の最前線で武器を勇ましく振るうグライザーがこんなに赤くなってまでした願いが…なぜその願いなのかただただ疑問だった。
「というより会っていないのか?すでに生まれて数か月も経っているのだぞ?」
「その…お生まれになったことは耳にしておりましたが、姫君様は星龍と謳われる程お麗しいと聞いております。そんな姫君様に自分のような戦しか知らぬ者が近づいては穢れてしまうのではないかと…」
グライザーの言葉に、何となく自分も似たようなところがあったことを思い出す。
確かに、私は初めて娘に触れたときに鱗が擦れて痛がられて以来、触れることを恐れ距離を置いていた。
しかし、距離を置いても娘に触れたい衝動と葛藤したものだ。
分かるぞ、グライザーよ。その気持ち。
「良かろう。娘にはセレンとリオラもついておるから心配もいらんだろうしな。」
「ありがとうございます!陛下!このグライザー、一生の幸福にござます!」
そこまでか…しかし、幼いうちよりたくさんの者たちと触れ合えた方が娘の教養にもなるだろう。
「では、早速鳥王国へと発ちます。」
「待て待て、そこまで急がずとも良い。遠征より戻ったばかりなのだ、少しくらい体を休めてからでも…」
ビューンっ!!!
って、もう居らんのか…そんなに娘に会うことが楽しみなのか。
あらかじめセレンとリオラには伝えておかねばならんな。
フィラルシェーラは普通の子供より大人びているのかあまり初対面の相手を怖がらんようだし。
「たくさんの者に愛されて幸せな子だ。生き物には前世があるというが、あの子は前世でも多くの者に愛されていたのだろうな…」
雲一つない青空を見上げながら、この国を、この世をあの子が伸び伸びと生きられるように、と心の中で思いを固める。
悪報一つであの子の誕生を汚されてなるものか、と…。