第2章 燃えたおつきさま
そうしてやってきた、お盆祭り当日。
家の人や友達と出店を回る予定があるため、その後に集まろうということになった――言うまでもないが、予定があるのはコナンくんだ――ため、待ち合わせの時刻は夜の八時と少し遅め。まだ小学生のコナンくんは、家の人には知り合いの家に遊びに行くと言っているらしい。
私も私で松田さんに出店の食いもん寄越せと広辞苑で脅されたので、待ち合わせの時間まで一人で出店をあちこち回る。途中、クラスメイトらしき人にぎょっとした顔で見られたが、仮面ヤイバーのお面を被って華麗にスルーさせてもらった。別にお祭りに一人で来たっていいだろ。
そんなふうに虚しい気持ちになりながら、私と松田さん用の、後にすべて私の胃袋に収まる四人前ずつのお好み焼きと焼きそばを手に、待ち合わせ場所――あの清めの塩をもらったお寺へと向かった。
「桃にしては考えたな。寺で送り火なんて」
一週間前、レシピ本の「住職」の言葉とお清めの塩をもらいにまた行くの面倒だしなーなんて思っていた時に考えついた案を聞いた松田さんは、感心半ば、真顔のままそんなことを言いやがった。本当にあの幽霊は余計な一言が多い。「よく考えついたな」でいいんだよ、そこは。
「あそこの住職さんとは仲良くなったからね」
「なのになんで友達出来ないんだろうな」
「やかましいわ」
私が訊きたいわそんなこと! と泣き真似をしてみたが、松田さんは涼しい顔でスルー。まじで泣くぞ。18歳、華の女子高生が恥も外聞もなく泣き喚くぞ。
「松田さんが冷たい」
「あ? 俺ほど桃を甘やかしてる奴なんざ他にいねぇだろうが」
「……否定出来ない」
そういやこの幽霊、なんだかんだ言って最後はきっちり私のために動いてくれるモンペだった。
例の動画の件だって私より怒ってくれてたし。ああ、ちなみにその動画は家に着いてからちゃんと探した。検索すれば意外とすぐ見つかったが、それだけ拡散されてしまっているってことだから嬉しくはない。
しかしながら、不思議なことにそれも次の日には見られなくなっていた。再生しようとしたら画面が真っ暗になったりするから呪いの動画とか言われていたらしい。まあそれも、すぐに風化して人々の記憶から早々に忘れ去られることになったが。
……ウチのモンペこわい。