第1章 たぶんそいつら全員幽霊
そんなとち狂った奴こと私にとって、この米花町は幽霊のオンパレード。縁を断ち切るも何も、すれ違う人の5人に1人は幽霊なんだから、本当にこの町の治安は死んでいる。たぶんどっかに死神いる。
本当ならこんなヨハネスブルグみたいな町からは尻に帆をかけ逃げ出したいところだが、親に養ってもらっている高校生の分際で一人暮らしなんて出来るわけもない。
しかも今年はついに地獄の受験生なのだ。洗濯機を回す時間だって惜しい。
しかし、そんな不幸の渦の中心みたいな人生でも、幸運なことというのは勿論存在する。
それは、幽霊達には私が視える人間だとは分からないということだ。
昔に見たホラー番組で、幽霊からは霊感のある人はオーラが白っぽくてペカペカ光って見える、なんて言っているインチキ霊能者がいた。
まだ中学生だった私はその霊能者を無言で指さしながら、隣で胡座をかきながら空中に浮かぶまさにその幽霊さんを見ると、幽霊さんは「ンなわけねぇだろ。電球かよ」とつまらなさそうに言っていたから、霊感ある人発光説は嘘だったんだろう。関係ないけど、そのすぐ後に「指をさすな」と怒られた。ごめんグラサン。
そしてそのグラサン幽霊いわく、幽霊達には生きている人間の霊感のあるなしは判別出来ないらしい。そもそも、こうして本当に幽霊の姿を視られるのは、ほんのひと握りの人だけだとか。私視えるんですって人の大半はあのインチキ霊能者と一緒で、なんの力もない輩だそうだ。
だから写真に変顔で写ってみたり、車の助手席に乗ってドライブを楽しんでみたり、好き勝手しているそうなのだが、たまにその場に霊感が少し強い人がいたりして、心霊写真が出来上がったり心霊現象が起きたりしてしまうのだと言っていた。
心霊写真に至っては、そこまで霊感がない人が撮るせいで不鮮明になってしまい、その結果ホラーちっくに出来上がるらしい。本人達は全力の変顔を披露しているというのに。
しかもテレビで大々的に放送され「これはなんやかんやでなんか伝えたくて姿を現した霊です……」なんて言われるなんてなんの地獄だ。
その話を聞いてからはホラー番組で出る心霊写真を見て「死んでから黒歴史作るとか、これぞ死んでも死にきれない」と言うのが私の中でのお決まりになっている。