第1章 たぶんそいつら全員幽霊
それから時は流れ、親の仕事の都合で転校した私は都内にある帝丹高校の3年生になった。
私の住むこの米花町は何かと事件が多くて、さらにそれが殺人事件だったりするから、この町には他よりもたくさんの幽霊達がいたりする。
だけど、高校生になった私は学んだ。
幽霊が、彼らが視えていることは絶対言っちゃ駄目なんだって。そうしないと、また前の学校の時みたいに孤立するから。
……まあ、正直言うともうぼっち生活が板ついてしまって「あ、はい」「あ、いえ」「あ、大丈夫です」なんていうコミュ障の極みみたいな返事しか出来ないから、今でも友達いないけど。別に悲しくなんてない。あ、でも友達は大募集してます。
さて、そんな風に一度慣れてしまったものは、そう易々と断ち切ることは出来ない。それはこのおかしな能力にもいえることで、一度結んでしまった縁というのは、中々切ることが出来ないらしい。
さっきも言った通り、この米花町は殺人事件が多い。さらに言えば、手の込んだトリックを使って殺しを行う人も。
最近こそ未解決事件も少なくなってきたものの、昔に解決されないまま忘れ去られた事件も数しれない。全くこの世に蔓延る殺人犯ってのは頭がいいなあ、と変なところに感心してしまった。
そしてそのトリックの中でも厄介なのは、密室などの一見すると殺人事件とは分からないもの。それを崩すのはさすがの警察でも骨が折れるらしい。そもそも、殺人事件だと気づかずに、事故として処理されることの方が多いのだから。
いつだったか、密室殺人を前に、テレビで見たサスペンスドラマの主人公は煙草片手にこうボヤいていた。
「ホトケさんの声が聞けたら一番なんだけどなあ」
ホトケさん、というのは殺されてしまった人のことを言うのだけど、死人にくちなしという諺があるのと同じように、普通は不可能なことだ。
――それこそ、小さい頃から幽霊が視えていて「こいつ(幽霊)と俺、まじ心の友だから! ズッ友!」とかとち狂ったことを言う奴がいない限り。