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【名探偵コナン】墓標に水やり

第2章 燃えたおつきさま




「おはー」


 日課である、というよりかは日課にさせられた筋トレメニューを一通り終えて、偉大なる母上様の朝食を有難く頂いた後。
 塀の上で通りを眺めていた松田さんに、焼き魚とお味噌汁、それからご飯と漬物が乗ったお盆を手に声をかけた。


「はよ」
「朝ご飯持ってきた」
「ああ、サンキュ」


 ぴょこんと塀から飛び降りた松田さんは、そのまま地面に着地することなく宙を浮き、やる気なさげにこちらに向かってくる。それをぼんやりと眺めながら、松田さんが畳に腰を下ろしたのを見て、朝ご飯の乗ったお盆を仏間へと置く。


「別に食べなきゃ弱るわけでもねぇし、毎朝律儀に持ってきてくれなくてもいいんだぜ。いや、ありがてぇけど」
「松田さんが霊体食べた後は私が食べられるからいいよ」
「……デ、」
「デブって言ったら塩撒く」


 祖父母の写真が飾ってある仏壇にお線香をあげながら、松田さんを睨みつけると、彼にしては珍しくサッと視線を外して魚を頭から齧った。


「……夜、随分魘されてたが、どうした?」


 松田さんが食べ終えたお味噌汁を啜っていると、不意にそう訊かれた。
 まさかそんなことを言われるとは思っておらず、思わず豆腐を掴もうとしていた箸を止めて松田さんの方を見ると、彼は器用に魚の骨を剥いて身をほぐしている途中で。

 なんとなく傷んだ胸を無視して、再び箸で豆腐を掴み、小さく頷いた。


「なんか夢見てたっぽい。なんにも覚えてないけど」
「誰かに食いもん盗られた夢とか?」
「どんだけ私が食い意地張ってると思ってんだ」
「俺の筋トレメニューなかったらまじでぶくぶくだぞ」
「てえい!」
「うわっ、バカ塩ぶつけんな!」


 ごま塩の塩を隣でお米を咀嚼していた松田さんに投げつける。
 別に清めの塩じゃないんだから効果ないじゃん、と素知らぬ顔で言ってやれば「条件反射だよ」と心底嫌そうに肩を払った。

 ふむ、ってことはやっぱり清めの塩は効くのか。


「……そこのお寺で清めの塩貰ってこようかなあ」
「そんなにデブって言ったの怒ってんのかよ!?」
「松田さん用じゃないって」


 ぎょっと目を瞠り、一瞬で私から数メートル離れた松田さんに呆れた声を出す。
 まあ、また何か失礼なこと言いやがったそれもやぶかさではないが。たとえばデブとかぶくぶくとか阿呆とか。うるせえ塩ぶつけんぞ。


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