第26章 翡翠の誘惑
「……だったら嬉しいけど…」
マヤの頬は、ますます赤い。それを横目で見ながら、ペトラはこんなことを言い出した。
「それなんだけどさ、私… 思うんだけど、すぐに誘ってくるのは意外とレイさんの方だったりして!」
「……レイさん?」
とマヤが怪訝な声を出すのと、
「おい、それ… どういう意味?」
とオルオが質問するのとが重なる。
「レイさんがさ~、マヤと私を舞踏会に招待するって言ってんのよね」
「なんだって?」
初めてそのことを知るオルオの声が驚きで裏返った。
「私とマヤの二人を誘ってるけど、私が推理するに本命はマヤなんだよね」
「ペトラ… 何を言ってるの…?」
マヤは信じられないといった顔をする。
オルオは内心で “ペトラ目当てじゃなきゃ別にいいけど” と考えた。
「だってレイさん、私に “マヤの首根っこ掴んででも連れてこい” って言ってたじゃん? うちら二人を招待してるけど、絶対来てほしい本命はマヤってことなんじゃない?」
「そんなことないと思うけど。あのときは私が任務じゃないと行かないって言ったから、そんなことを言わずに来いよ、ペトラが連れてこいよ… みたいなニュアンスで本命も何もなかったけど…?」
「そうかな…?」
「そうだよ…!」
あごに手を当ててペトラは少し考えていたが、何かを思いついたのかニヤリと笑う。
「まぁ、いいや。そのうちどっちが正しいかわかるよね?」
「うん、そうだね。レイさんは普通に団長経由でペトラと私を招待してくれるだろうからね! そこに差はないと思うよ」
マヤも自信満々で答える。
「なぁ、それって俺は呼んでもらえないの?」
「馬鹿ね! オルオなんか呼ばれる訳ないでしょ!」
「そんな言い方しなくてもいいだろ! 俺だってもう一度招待されて、ゆっくりとご馳走を食いたいんだけどな…」
オルオは淋しそうな声を出した。