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【リヴァイ】比翼の鳥 初恋夢物語【進撃の巨人】

第11章 紅茶の時間


紅茶を受け取ったミケは、ニヤリと笑った。

「親父さんは、パクったって訳か」

「あはっ、そうなりますよね。私も手紙を読んでそう思いました。今度帰ったら、言ってやります」

マヤも笑いながら、ソファの端に腰かける。

そしてそっとリヴァイの顔色をうかがった。

リヴァイはカップから湯気とともに香り立つ柑橘類の甘酸っぱい匂いに、新鮮な驚きを感じていた。

「……ほぅ」

そうつぶやく眉間には皺がなく、少年のように見えた。

カップの縁に口づけた薄いくちびるを、マヤはドキドキしながら見つめる。

……兵長に気に入ってもらえるかな…?

「……悪くねぇ」

薄いくちびるから紡がれたひとことに、マヤの頬は薔薇色に染まった。

「ほんとですか!?」

「あぁ」

リヴァイはさらに口づけると、静かに語った。

「ほろ苦さと甘酸っぱさと… 渋みのバランスがいい。それに香りが鼻に抜けるとき…」

リヴァイは上を向き、目を閉じた。

「……抜けるとき…?」

「いい気分だ」

そうささやきながら再びマヤを見た瞳は、とても穏やかに揺らいでいた。

マヤも一口飲み、顔を輝かせた。

「ほんと! 兵長の言うとおりですね」

「あぁ」

リヴァイとマヤは、幸せそうな笑みを交わした。

いや… リヴァイの場合、はたから見れば笑っているようには見えなかったかもしれない。

しかしこのときマヤには、リヴァイがわずかであるが笑ったことがはっきりとわかった。

そしてそのことが本当に心の底から嬉しくて、マヤも微笑み返した。

「オレンジの皮を乾燥させて刻んであるんですけど、リラックスする効果があるらしいです」

「茶葉とのバランスが難しいだろうな…。見事だ」

「紅茶にうるさい兵長が褒めてたって言っておきます」

「おい、うるさいってなんだ」

「ふふ、誉め言葉ですよ?」

「そうは聞こえねぇが」

リヴァイとマヤの織り成す言葉たちが、オレンジの香る紅茶の湯気とともに執務室に広がってゆく。

ミケは黙って紅茶を飲みながら二人のやり取りに耳を傾けていたが、やがて静かに口角を上げると手許の新聞に目を落とした。


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