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【リヴァイ】比翼の鳥 初恋夢物語【進撃の巨人】

第25章 王都の舞踏会


手洗いを終えたマヤは、元来た廊下を帰ろうとしたが。

………!

風を感じた。

……あれ? お屋敷の中なのに…?

不思議に思って、引き寄せられるように風の吹いてくる方へ。

「あ…」

少し行けば大きな掃き出し窓が開いていた。一歩近づくごとに初夏の夜風の運ぶ涼気が強くなる。

……テラスがあるのね。

月明かりに照らされて、装飾の施された白い大理石の柱が何本も見える。

行ってみようと、ひらいた掃き出し窓から一歩入ったところで。

「……クソったれが!」

聞こえてきた怒りを孕んだ低い声に、全身が凍る。

廊下からは見えなかったテラスの奥に、人影があった。手すりにもたれかかって、夜空を仰いでいる。

マヤはその人影が誰だか、すぐにわかった。

……給仕さんだわ!

どうしよう…。

ここは気づかれずに、引き返さないと。

テラスに踏み入れている左足をそうっと上げて、そのまま後退しようとしたのだが。

突如吹いた強い夜風が、マヤの長い髪をなびかせた。

「ひゃっ」

舞った髪が顔に張りつき、思わず小さく声をもらしてしまう。

髪を手で払いのけたら、給仕が思いきりこちらを見ている… と思う、多分。

なにしろ髪で顔が半分隠れているので、彼がどこを見ているかはよくわからないのだ。

「……あっ、あの…!」

気づかれずに去るつもりが見つかって焦ってしまい、相手が何も言っていないのに弁解を始めた。

「大丈夫です! 私、誰にも言いませんから!」

「ハッ、聞かれてたか…」

給仕はマヤには聞こえないくらい小さな声でつぶやくと、姿勢を正して頭を下げた。

「これは失礼いたしました。聞き苦しい私の発言で、お嬢様に不快な思いをさせてしまって申し訳ありません」

「えっ」

まさか謝罪されるとは露ほども考えていなかったマヤは一瞬かたまってしまった。

だが深々と下げられている黒いボリュームのある髪を見ていると、急速に強い想いが湧き上がった。

「謝らないでください! 私、全然不快になんか思ってないです。お仕事で鬱憤がたまるのなんて当たり前だと思います。どこかで吐き出さないとやってられないですよね? それに…」

マヤは必死で想いをぶつける。

「それに、私… お嬢様なんかじゃありません。ただの一般兵士です!」


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