第25章 王都の舞踏会
「はぁ…」
オルオは深くため息をつく。
マヤと見守ろうと言ったものの、いざカインと抱き合うようにして踊っているペトラを見つづけるのは正直、辛い。
「オルオ、マヤ」
「「団長!」」
ずっと貴族に囲まれて、その姿すら見えなかったエルヴィンが戻ってきた。
「楽しんでいるか?」
「ええ、まぁそれなりに…」
とマヤは返答したが、オルオはうつむいて黙っている。
踊っているペトラの方をちらりと見てエルヴィンは、オルオの態度も致し方ないと思った。
「あの… 団長、兵長は?」
マヤはずっと気になっていた。団長も兵長も姿が見えないことに。貴族に囲まれてしまって抜け出せないでいるのだろうとは予測していたが、今こうして団長は戻ってきてくれた。
でも兵長は?
どこにいるの?
「リヴァイなら、使いに出した」
「え?」
てっきり… どこそこにいるとか、貴族につかまっているとかの答えが返ってくるものと思いこんでいたマヤは、想像もしなかった言葉に驚いた。
「……使い… ですか?」
「あぁ、今はまだ話せないがな。リヴァイは貴族令嬢のさえずりにうんざりしていたから、喜び勇んで飛び出して行った」
……兵長が喜び勇んで…?
どう考えても、兵長のそんな様子は想像がつかなくてマヤは首をかしげた。
「はは、喜び勇んでという顔ではないがな。だが屋敷を脱け出せて助かっただろうな」
「そうですか…」
リヴァイ兵長がどこへ行ったのか気にはなるが、エルヴィン団長が “今はまだ話せない” と言うからには、今それを知ることはできない。
マヤはそれ以上、追求しなかった。