第25章 王都の舞踏会
「そうですか…。大丈夫ですか?」
「うん。いつものことだし、気にしなくて平気さ。それで僕んちのミスリル銀は、すでにある産地より豊富に出るんだな~。だからケーキにだって使えるんだ。もうどんなものだって加工できるんだよ? 装飾品はもちろん武器や食器や、それにデザートにも! すごいだろう?」
ペトラの手を取って軽やかにリードしながら、カインは得意そうだ。
「はい、すごいです」
素直にすごいと同調してくれたペトラに、カインは賛辞を贈る。
「ペトラは顔も可愛いけど、性格も可愛いな!」
「えっ、そうですか?」
「そうさ。僕のまわりはミスリル銀のことでもなんでも、ひがむ輩が多くてね、色々とケチをつけてくるんだな。嫌になる」
その整った美しい顔をゆがめるカイン。
「大変ですね…」
「でもペトラさえ手に入れば嫌なことも忘れられる」
至近距離からハンサムなカインに見つめられて、そんなセリフを言われてペトラは心拍数が上がってどうにかなりそうだ。ちゃんと何か返事をしないと… と思うが、恥ずかしいし慣れていないし、何も言葉が浮かばない。ただ赤くなって、カインの美しい顔を見上げるしかなかった。
「ところで、あの二人はペトラとどういう関係なのかな?」
「え?」
「ほら、僕たちをずっと見てるよ。男の方は上司だろ? 女は友達?」
カインが見ている方向を見なくても、誰のことを言っているかわかったが、一応そちらを確認する。
やっぱりオルオとマヤのことだ。
「……上司じゃないです。二人とも同期です」
「へぇ! 見えないな。団長さんより年上だって言っても驚かないな!」
「あはは…、ですよね。昔からオルオは年上に見られがちで…。でもマヤは綺麗だし、とてもいい子で自慢の友達です」
「マヤっていうのか、あの娘…」
カインは自身とペトラをちらちらと心配そうな顔をしてうかがっているマヤを眺めていたが、首を横に振った。
「全然駄目だな!」
「………?」
「ちょっといいかなと思ったけど、やっぱ僕はペトラの方が文句なしに可愛く見えるよ」
「……そうですか?」
「うん。さぁペトラ、僕にすべてをゆだねて?」
優しくささやいてペトラの腰に手をまわす。
魅入られたようにカインのアイスブルーの瞳を見つめながら、ペトラは身を任せた。