第25章 王都の舞踏会
執事が消えるやいなや、オルオが口をひらいた。
「団長。グロブナー伯爵の息子がペトラに惚れてるってことでいいんですか?」
「単純に考えれば、そういうことになると思うが…」
エルヴィンは言葉を選んでいる様子だ。
「もしそうならば、ペトラにはうまく立ち回ってほしい」
「………?」
オルオはエルヴィンの言葉の意味がよく理解できないようだ。
「オルオ。今から言うことは君には酷かもしれないが…、私とリヴァイが定期的に夜会に出ていることは知っているね?」
「はい」
なんとなくオルオは直属の上司であるリヴァイの方を見ると、鋭く視線は跳ね返された。
その表情は険しく、リヴァイは今からエルヴィンが何を話すのかをわかっているようだった。
「貴族にとっては、わざわざ壁の外に出て巨人を調査しようとする我々調査兵団は、格好の標的なんだ」
「……標的… っすか」
リヴァイが横から口を挟む。
「あぁ、ぶくぶくと太った豚野郎の卑しい好奇心のな」
口は悪いがリヴァイの言っていることは真実だと、エルヴィンは同意してうなずく。
「時間をかけて王都へ行き夜会に出るのは、何も遊んでいる訳ではないんだ。その目的はひとことで言えば、資金集めだ。調査兵団が一番資金を必要とするのに、その予算は三兵団の中でもっとも少ない。そのうえ何かと理由をつけては憲兵団の予算は増額され、調査兵団は減額される。そんな現状でも壁外調査には行かねばならない。壁外調査こそが我々調査兵団の存在意義だからだ。壁外に行かず訓練だけをおこなう日々は無意味だ」
「そうっすね…」
「だが壁外調査には金がかかる。資金が必要なんだ。そのためには、なんだって利用するしかない。私とリヴァイは夜会で貴族の求める壁外での巨人との遭遇物語を提供したり、鍛錬した肉体を使って資金を搾り取っている」