第25章 王都の舞踏会
………?
リヴァイの言葉に、きょとんとするマヤ。
「……私ですか?」
自分に言われたかどうかも定かではなく、自分でも変だとは思いつつ “私ですか?” と確認を取る。
「お前以外に誰がいる」
「危機感… ですか?」
「そうだ。いいか、年頃の女なんだから気をつけろって言ってるんだ」
リヴァイのこめかみに青すじが浮かんでいる。
「……はい」
なぜこんなにも叱られているのかマヤには理解できず戸惑うばかりだが、これ以上反論すればもっと怒られると思い、とりあえず謝った。
「……すみません」
「別に謝ってほしい訳じゃねぇ。気をつければいいだけだ」
「……はい」
リヴァイとマヤのやり取りを興味深く見ていたエルヴィンが、
「やれやれ、今からそれでは先が思いやられるな」
と首を左右に大きく振った。
「……あ?」
「リヴァイ、マヤをピクシス司令に紹介するのは、お前がいるときにするから…。それでいいだろう?」
「……あぁ」
不承不承な雰囲気で、リヴァイはうなずいた。
「マヤ、リヴァイは少し過保護すぎるが… 気持ちはわからないでもない。年頃の女の子は確かに、何かと気をつけた方がいいかもしれないな」
「はい…」
そう返事をしながらもマヤは、心の中で “気をつけるって何を?” と思っていた。
マヤの胸中などエルヴィンはお見通しだ。
「マヤの周りには今まで、そんなに悪い男はいなかったかもしれないが、世の中そう綺麗なものでもないんだ。現に今回のペトラの指名は胡散臭い。気を引きしめないとな」
「あぁ… そうですね…」
“生贄の花嫁のドレス” のことを思い出して、マヤは不安そうに眉根を寄せた。