第25章 王都の舞踏会
オルオとの会話がきっかけでそういう風に考えているマヤは、エルヴィンに “デートと違うのか” と問われて、下を向いて口ごもってしまう。
「恥ずかしがる必要は何もないと思うがね。あのリヴァイと二人で街へ行って食事をしたんだろう?」
こくりと小さくうなずいたマヤを励ますように、エルヴィンは優しく。
「ならもっと胸を張りたまえ。それはデートだし、リヴァイもそう意識しているはずだから」
「兵長が…?」
にこにこと優しい笑顔でいたエルヴィンの碧い瞳が、意味ありげにキラリと光る。
「あぁ、間違いない。これでもリヴァイのことは、ある程度はわかっているつもりだ」
エルヴィン団長が断言すると、必ずそのとおりだという気になるから不思議だ。
「マヤ、君とリヴァイはデートをした。そしてこれからもする。いいね?」
「……はい」
“いいね?” となかば強引に肯定の言葉を引き出された。この場では “はい” とマヤはうなずくことしかできない。
……でも、団長が兵長のことをいくらわかっているといっても、これからもデートをするだなんて、どうして言いきれるの?
そういえばハンジさんも、兵長は必ずまた誘うと断言していた。
団長もハンジさんも、兵長とはとても近いところにいる人。その二人が “またデートをする” と言うなら、きっとそうなるのだろう。
マヤの心は軽くなって、まだ半分ほどティーカップに残っている紅茶に口をつける。
「……話を戻すが」
エルヴィンが、また話し始めた。
「純白のドレスといえば花嫁のウェディングドレスだろう? だが我が調査兵団ときたら、五人いる幹部のうち半数以上が違った回答を出す。全く興味深い」
腹の底から愉快そうに笑うエルヴィンを見て、マヤは気づいた。
「……半数以上? あっ、ハンジさんの答えを聞いてないんだった…。ハンジさんは、なんて答えたんですか?」
「ハンジはこう言ったんだ… “まるでフューネラルドレスのようじゃないか” と」
「フューネラルドレス? ……なんですか、それ? 聞いたことないんですけど」
初めて聞くドレスの名の意味を気軽に訊いたマヤだったが、エルヴィンの答えにぞっとすることになる。
「フューネラルドレスは死に装束だよ。死者に着せるドレスさ」