第25章 王都の舞踏会
「ねぇ、これってベッド二台しかないし、オルオは外で雑魚寝ってことじゃない?」
辛辣なペトラにオルオが口を尖らせた。
「えー! つれないこと言うなよ。俺、窓んとこの椅子でいいからさ」
「オルオのくせに椅子を使う気なの?」
「何を!」
また小競り合いを始める二人。
「ねぇ、夜じゃないんだしベッドで寝なくてもいけるんじゃない? 多分私は寝なくても平気だから、ベッドはオルオが使っていいよ?」
マヤの意見にオルオが嬉しそうに反応した。
「さすがマヤ! 優しいよな~」
「え~! じゃあ私もマヤと一緒に窓んとこの椅子に座っとく。ベッドはオルオ、あんたが一人で使えばいいよ!」
「ちぇっ、可愛くねぇの…」
オルオのすねた口調に、ペトラは追い討ちをかけた。
「別にオルオに可愛いと思ってもらわなくていいもん!」
そうして船窓のところの椅子にはペトラとマヤが座り、ベッドにオルオが腰をかけた。
しばらくは窓からの眺めを楽しんでいたペトラだったが、眠気が襲ってきた。
「ごめん、やばい、ちょっと寝かせて?」
マヤにそう言ったかと思うと、空いているベッドの方へ倒れこんで、そのまま眠ってしまった。
「やれやれ、やっぱ寝るんじゃん」
オルオが半分あきれたような、でも半分愛おしい人に向けて出すような声で笑う。
「ペトラ、疲れてるから」
マヤが備えつけの毛布をかけてやりながら優しく言うと、オルオが反発した。
「それはマヤ、お前もだろ?」
「うん…。まぁそうだけど、でもやっぱり貴族に指名されたのはペトラだし、私が感じるストレスよりいっぱい疲れてるんじゃないかな?」
「……そう言われたらそうかもな」
「うん。だからオルオも優しくしてあげてよ?」
「けっ! 俺はいつだって優しくしてやる気満々なんだけどよ、こいつがなぁ、いちいち噛みつくっていうか」
すっかり深い眠りについて、むにゃむにゃ言っているペトラの寝顔を見下ろしながら、オルオは優しい顔つきになった。
「……まぁ、そこが可愛いんだけど?」