第25章 王都の舞踏会
「……そろそろ客室に行かない? 客室はね、高貴な人が使う一等船室とそうじゃない二等船室があってね、でもそれはどちらも数が限られていて、残りは部屋なんかなくて広間で雑魚寝か、甲板にあるベンチで座っておくみたいなの」
ペトラはきょろきょろと甲板を見渡した。
「ベンチってそんなに数がなくない?」
「うん、そうだね。ベンチに座れない人はそのへんに立つか、しゃがむかなのかなぁ?」
「え~! 7時間とかあるのに、それはきついよ」
「でもね、今回はグロブナー伯爵がいいお部屋を用意してくれてるらしいから、行こうよ」
「了解!」
三人は船内に入り、一等船室の前で立ち止まった。
「ここが団長と兵長のお部屋だって。それでこの隣を私たちが使っていいんだって」
「ふぅん。一応部屋に入る前に挨拶しておく?」
「それがいいね」
ペトラとマヤはうなずき合ったのち、扉をノックした。
「「「失礼します」」」
三人で扉の内側に入れば、もう船室はぎゅうぎゅうだ。
船窓のそばに小さな椅子とテーブルが設置してあって、エルヴィン団長とリヴァイ兵長は座って運河を眺めていた。
小ぶりな寝台も二台設置してある。
ペトラに小突かれてオルオが、代表して発言した。
「我々も隣の船室で待機しようかと思いますが、よろしいでしょうか?」
「あぁ、かまわない。王都まで時間はたっぷりあるから、しっかりと身体を休めたまえ」
エルヴィンが笑みをたたえて、おだやかに指示を出した。
「「「了解です」」」
三人は再び声を揃えて敬礼すると、船室を出ていった。
隣に位置する船室は、今しがた訪れたエルヴィンとリヴァイにあてがわれているものと同じ間取りだ。