第25章 王都の舞踏会
思い起こせば昨夜。
団長室でやたらハンジがからんできた。マヤにまつわる話ばかりをふっかけてきて、ミケのクソ野郎と一緒に、にやついてやがる。
挙句の果てには “マヤとリヴァイ、君たちの恋” などと、口に出すのもはばかられるような言葉を臆面もなく…!
団長室を飛び出て執務室に戻れば、机の上には無造作に置かれた書類が一枚。
角を揃えて置いてある書類の山の上のその一枚が、机上の調和を乱している。
……チッ。
リヴァイには舌打ちをした理由が、そのゆがんで置いてある書類のせいか、団長室でのハンジの言葉のせいなのかが判別できない。
苛立ったまま、乱暴に書類を掴む。
………。
それは立体機動装置の使用許可申請書。
この時間に提出してくるのは…、翌日の朝に使用するためが多い。
昼休みや夕方に使用する場合は、午前中に提出される場合がほとんどだ。皆が大体は、半日ほど先の許可を求めてくる。
そして翌朝のための使用許可申請書を出してくるのが誰かは決まっている。
……オルオだ。
判で押したような内容。
使用日は明朝、使用目的は自主訓練、使用者は申請者およびマヤ・ウィンディッシュ。
たかがマヤという文字の羅列であるのに、目に飛びこんでくればそれだけで。
どうしてこんなに胸が苦しくなるのだろう。
オルオとならんでそこにある、マヤの名前。
見過ごせない、見なかったことにできない。どうしたって気になって。居ても立ってもいられない。
オルオのことは信用している。
それでも。
早朝のまだ朝霧の立ちこめる森で、マヤと二人きりになるのかと思うと、ざわざわと心が騒ぐ。
二人の自主練に強引に参加して、マヤを追いかけて捕らえたあの日。
もうあんなガキみてぇなことはしねぇと思っていたのに。
夜が明ける前に森に入っていた。
マヤを想って高い枝に身を預け、枝葉の向こうに少しずつ広がっていく東雲を睨む。