第25章 王都の舞踏会
「うん、わかった」
女子特有のうだうだした悩みを真剣に聞いてくれたオルオに心からの友情を感じる。
「オルオ、ありがとう」
「おぅよ」
オルオは鼻の下を右手でこすったあと、つづける。
「まぁ、あれだな。つきあってなくてもデートってのはありな気がしてきたわ。マヤと話してると」
「そう?」
「あぁ。俺とペトラの場合と違ってお前と兵長の場合は、そういう雰囲気でいいんじゃないかって思った、なんとなく… よくわかんねぇけど」
「よくわからないんだ」
「そりゃよくわからんだろ。マヤ、わかんの?」
「ううん、ちっともわからない」
「だろ?」
「だね!」
マヤとオルオは笑い合った。
「……そろそろ真面目に訓練するか」
「了解」
二人は枝の上にすっと立った。
「……コースはどうする? 結構話しこんじゃったし、ショートにしとく?」
「だな」
「2秒?」
「馬鹿にするな! 3秒!」
「了解! じゃあ…」
いきなりスタートしかけたマヤをオルオが止める。
「ちょっと待て」
「ん? なぁに?」
「肝心なことを訊き忘れたわ。お前、兵長のこと好きなのか?」
マヤが耳まで赤くなる。
あらためて訊かれると、思いのほか恥ずかしい。
オルオは心からの友達だし、今しがたデートかそうじゃないかなどと、きっと男子からしたらどうでもいい悩みも聞いてくれたばかりだし、質問には誠意をもって答えたい。
答えたいのだが、恥ずかしくて到底口にできそうにもない。
「おい、無視すんなよ」
……どうしよう。
困ったマヤは唐突に良い解決方法を思いついた。
「……その答えは…、私を捕まえたら教える! 行くわよ!」
「おい! マヤ! あぁクソ、1、2、3!」
慌ててマヤのあとを追うオルオ。
……カンッ! パシュッ! ……カンッ! パシュッ!
「畜生、あのチビめぇ! 待ちやがグアッ… ガリッ! グアァァッッ!!!」
舌を噛んだオルオの絶叫が響く立体機動訓練の森。
がさがさがさ…。
マヤとオルオが座っていた枝のはるか上で、葉が揺れる音がする。
「……今ここで答えろよ…。わかんねぇだろ…」
枝に片膝を立てて腰かけていたのは、他の誰でもないリヴァイだった。