第25章 王都の舞踏会
「……ペトラの気持ちがオルオにない以上…」
……そっか。いくら自分が相手を想っていても、相手が同じように想ってくれなかったら、それは…。
マヤがオルオの言葉について、あれこれと考えていると。
「おいおい、“ペトラの気持ちがオルオにない以上” なんて繰り返すなよ。傷つくだろ」
「あっ、ごめん」
慌ててオルオの顔を見て謝れば、そこには悪戯っぽい瞳が待っていた。
「まぁもともと俺が言ったんだけど?」
「あはっ、そうだね」
「あはは、情けねぇよな」
オルオは白い歯を見せたあと、ふいに真剣な顔をする。
「俺は、俺とペトラの場合はデートじゃないと思うけど、マヤと兵長の場合は正直わかんねぇ。だってよ、俺とペトラの関係と、マヤと兵長の関係は違うものなんだし、あてはめられないだろ?」
「うん…。そうだね」
「だからマヤがデートだと思うか、兵長がデートだと思うか… で決まるんじゃないか?」
「……じゃあ、兵長ははっきりと “執務の礼” だって言ってたからデートじゃないね…。うん、そうだとは思ってたんだけどね、あはは…」
泣きそうな顔をして自虐的に笑うマヤにオルオは。
「馬鹿か! そんなデートだってわざわざ言って誘わねぇだろ、普通」
「……そうなの?」
「当たり前だろ。大体 “デート” とかってよ、女が勝手に騒ぐだけで、男は照れくさくてそんなの言わないんじゃねぇの? だから兵長が執務の礼と口では言っても、本心はわからんよな」
「うん…」
下を向いているマヤに、オルオは励ますようにまた背中を叩いた。
「でも… そう何度も礼だと言って誘うのも変だし、次にまた誘われたら、それはデートなんじゃねぇの? たとえ兵長がそう言わなくてもよ」