第25章 王都の舞踏会
「いや…、その、デートする仲って訳ではないよ…?」
恥ずかしさから、ごにょごにょと小さな声になってしまうマヤ。
「えっ、つきあってんじゃないのかよ?」
「……つきあってない」
オルオの顔が疑問符でいっぱいになった。
「つきあってないけど、デート?」
「いや、あのね。もともとデートだとは別に兵長にだって言われてないの。私が執務を手伝うようになったんだけど、それのお礼ってことで…」
「へ? でもデートだってペトラが言ってたけど?」
「うん…。それなんだけど、ペトラがデートなんだからデートだって自信を持てって言うし、私もそうかなって…。それにつきあってなくてもデートってありだよね? ……ねぇ、どう思う?」
「いや… そんなこと俺に訊かれても…」
「オルオがペトラとよく二人で街に行くのは、デートなの?」
瞬時にオルオの顔が赤くなる。
「俺は… デートだとは思ってない」
「……そうなんだ」
意外だと、マヤは思った。
ペトラは、オルオとの二人きりでの外出をデートだとは認めないに違いない。
“勝手についてきてるだけよ!” とか “荷物持ちに便利だからね” などと言うペトラの声が今にも聞こえてきそうだ。
ペトラがオルオとの外出をデートだとは思っていなくても、ペトラを想っているオルオは、デートだと思っているのではないかとマヤは考えていた。
だが、違うと言う。
……どうして?
声には出さなかったが、マヤの不思議に思う気持ちが顔に出ていたのだろう。
オルオは答えてくれた。
「ペトラと二人でなんか、ガキのころから何回も出かけてきた。最初は俺だって意味なんかなかったけどよ、そのうち俺には意味があるものになっていった。デートなんていえば照れくさいけど、ペトラと二人で何かを見たり買ったり食べたりしてよ…。でもペトラの気持ちが俺にない以上、デートだって俺が言うのは違うかなって思うんだ」