第11章 紅茶の時間
明くる日の午後、マヤはミケ分隊長の執務室にいた。
午後の訓練の第一部を終えたあと、ミケ分隊長と一緒に執務室に来て書類の整理を手伝っている。
調査兵団の兵士の訓練のスケジュールは、基本的には以下のとおりだ。
午前の訓練が、8時半から11時半。
午後の訓練は二部に分かれており、第一部が13時から15時半、第二部が15時半から18時となっている。
午前午後それぞれの始業の8時半と13時は厳守されなければならない。その他は訓練の進捗状況や 野外での訓練の場合は天候にも左右されるので、臨機応変に対処されている。
第一部は基本的に各班での訓練となる。第二部は、自主訓練および立体機動装置の整備、馬の手入れ、清掃にあてられる。
例外として遠征訓練や実地訓練などをおこなう場合は、第一部と第二部は統合される。
マヤが分隊長の執務を手伝う時間は、午後の訓練の第二部の時間にあたる。
平常時において兵長や各分隊長は午後の訓練の第一部を指導したあと、第二部の時間にはそれぞれの執務室で執務をこなしている。
マヤが執務の補佐を務めるようになってから一週間以上経ち、随分と要領を掴んできた。
午後の第一部訓練を終え、ミケ分隊長とともに執務室へ行く。
そこで一時間ほど執務をおこない、小休止を取る。
マヤが持ちこんだ紅茶のセットで紅茶を淹れ、穏やかな時間が流れた。
ミケは口数は少ないが、マヤは気にならなかった。
逆にいえば全く会話がなく、ただ黙って二人で紅茶を飲むだけのときも往々にしてあったが、それを心地良いとさえ感じていた。
この日もマヤが紅茶を淹れ、ミケがひとこと美味いとつぶやきマヤが微笑んだあとは、お互いそれぞれに休息を取っていた。
ミケは新聞を広げ隅から隅まで目を通していたし、マヤは人さし指と中指でこめかみをグイグイと押していた。
そう… この日も、いつもどおりだった。
執務室の扉が、ノックもなしにいきなりひらかれるまでは。