第23章 17歳
もらったプレゼントをバウムクーヘンの箱が入った紙袋にマヤが入れている間に、店員は手際よく酒とサラダ、おしぼりをテーブルに並べた。
「あとから他の料理も順番にお持ちしますんで!」
店員はにっこり笑うと去っていった。
「……では」
リヴァイがグラスを手に取る。それを見てマヤも。
「マヤ、誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
「これからも… よろしく」
「え?」
……何を?
と思ったが、すぐにマヤは意味がわかった。
「あっ、執務のお手伝いですね! 了解です」
「………」
もちろん執務もだが、それ以上の意味をこめたつもりだったリヴァイは、自身の気持ちを伝えることの難しさを知る。
……まぁ、いい。
焦る必要はない。
今、目の前に座っているマヤ。エールのグラスを持って、俺をまっすぐに見つめて微笑んでいる。
それだけで胸が熱くなる。
今は、これで充分に満たされている。
グラスをくいっと持ち上げてウイスキー・ソーダを流しこむ。向かいのマヤはエールに口をつけ、ほんのりと頬を染めている。
これ以上に美味い酒はねぇ。
「いただきます」
両手を合わせたマヤが、鶏むね肉と夏野菜のシーザーサラダを取り分けた。
「美味しい!」
その大きな目をさらに真ん丸にして、真っ赤に熟れたトマトを頬張っている。
「兵長も…、早く!」
普段はトマトは積極的に食う食材ではねぇが、手が勝手に動いちまう。
「……美味ぇな」
「ですよね! このサラダにして良かった。このドレッシング、自家製かしら?」
もぐもぐとレタスを食べながら、幸せそうだ。
「はい~! チーズオムレツとトマトの冷製スープです!」
店員が次から次へと料理を運んでくる。
「兵長、どれもとっても美味しいです!」
マヤは美味しそうに楽しそうに、飲んで食べて。リヴァイはそれを眺めて、満足そうにまばたきをしている。
少しずつ、マヤの17歳の、初めての夜は更けていく。